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「共謀罪」参院へ  審議尽くす責任がある

 「政府の説明は不十分」との国民の声を無視した、強引な国会運営と言わざるを得ない。
 「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法の改正をめぐり、与党側が先週の衆院法務委員会に続いて本会議での採決に踏み切り、法案を通過させた。
 国会は熟議の場であるはずだ。ところが閣僚答弁の迷走もあって、野党と政府側のやりとりはほとんどかみ合わないままだ。数々の疑問点や異論を置き去りにするのなら、一昨年の安全保障関連法の時と同様、与党の「数の力」の乱用である。
 参院では、あらためて議論を仕切り直すべきだ。
 共同通信の世論調査では77%が、説明が十分でないと答えている。法案そのものへの賛否は40%前後で拮抗(きっこう)しているが、「今国会で成立させるべき」との意見は31%にとどまり、逆に「成立させる必要はない」が56%に上る。
 過去3回の廃案時と異なり、政府は共謀罪の適用対象を絞ったことで「一般人は対象にならない」と繰り返す。だが捜査機関による拡大解釈の余地は大きく、人権を過度に制約しかねないと国連の専門家までが懸念を示している。
 こうした指摘に政府・与党は真摯(しんし)に向き合うべきだ。2020年東京五輪・パラリンピックを控えたテロ対策との一点張りで押し切ろうとするのでは、政治不信に拍車がかかるのはもちろん、本来必要なテロ対策の議論までゆがめかねない。
 内心の自由をはじめとする個人の権利とテロ対策をどう両立させるのか。捜査の行き過ぎをどうチェックするか。そもそもテロをどう定義するのか。一つ一つ熟考と国民への丁寧な説明が欠かせない。自民、公明両党と日本維新の会の修正協議で、取り調べの可視化やGPS捜査の制度化の検討が法案に盛り込まれたが、それも十分な討論の結果とは思えず、今後の憲法改正などをにらんだ3党の妥協という印象が拭えない。
 与党は会期延長も視野に、今国会で法案を成立させる方針を堅持する。だが何より優先すべきは、数の力におごらず審議を尽くすことだ。民進党など野党にも一層の論戦力が求められよう。
 諸外国には、共謀罪を含めて強い捜査権を導入している例が少なくないが、英国のコンサート会場で22日に起きた爆発事件をみてもテロ防止は一筋縄ではいかない。だからこそ対策の実効性と、人権とのバランスの議論が必要だ。

[京都新聞 2017年05月24日掲載]

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