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自民の改憲論議  「首相主導」でよいのか

 自民党の憲法改正推進本部が、安倍晋三首相(党総裁)の改憲提案を踏まえ、具体的な検討作業に着手した。
 9条への自衛隊明記のほか、高等教育の無償化や大災害時の緊急事態条項、参院選「合区」解消の4項目を中心に議論する。2020年の改正憲法施行を目指し、年内に党改憲案を取りまとめるという。
 とはいえ、4項目それぞれが熟議を要する重要なテーマである。残り半年ほどの期間に十分な議論ができるとはとても思えない。
 そもそも首相案は、衆参両院の憲法審査会で進められてきた議論や自民が掲げてきた改憲草案の頭越しに示されたものだ。これまでの議論の積み重ねをないがしろにするかのような提案に、党内で批判の声が広がる気配が感じられないのはどうしたことか。「安倍1強」の弊害は明らかであり、そんな状態で自由で活発な党内議論ができるのか極めて疑わしい。
 推進本部は、改憲案を取りまとめた後、来年の通常国会で衆参の憲法審査会に示す構えだ。改憲の発議に向けた原案を作成する権限を持つ審査会は、これまで与野党の話し合いを重視してきたが、推進本部の幹部会メンバーで衆院審査会委員の古屋圭司自民党選対委員長は今月初め、個人的な見解としながら「どの項目を発議するかは採決で決めることもあり得る」と多数決での決着を示唆した。
 「加憲」の公明党と改憲を掲げる日本維新の会を取り込み、期限ありきの議論で数の力で国会発議に持ち込めば、多くの国民の反発を招くだろう。
 9人から21人に拡充された推進本部の幹部会メンバーには、党重鎮の高村正彦副総裁や首相に近い下村博文幹事長代行らが加わり、首相主導の改憲案作成が進むとみられる。これまでの改憲草案との整合性を重視し、首相の改憲提案に否定的な石破茂元幹事長を起用したのも、党内の批判勢力を取り込むことで異論を封じたい思惑があるとみていい。
 国のかたちを変える改憲は、必要性まで含めた丁寧な議論がなければ国民の理解は深まらず、将来に禍根を残すことになる。
 焦点の9条への自衛隊明記については、どんな文言にするかで自衛隊の活動の変容につながりかねない。1票の格差是正のために昨年の参院選選挙区で導入された「合区」の解消も、二院制の見直しにまで発展する可能性のある問題である。
 拙速な議論は慎むべきだ。

[京都新聞 2017年06月08日掲載]

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