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朝鮮学校判決  無償化は普遍的な理念

 朝鮮学校を高校無償化の対象から外した国の措置の適法性を争う裁判の判決が広島、大阪の両地裁であった。広島地裁は国に裁量の逸脱や乱用はないと判断したが、大阪地裁は国の処分は違法、無効とする判決を言い渡した。
 正反対の判決をどう考えればいいのか。
 争点はいずれも「社会全体で子どもの成長を支える」という無償化に、例外を認めるかどうかだ。
 高校無償化は民主党政権時代の2010年に始まった。専修学校や外国人学校などが対象に含まれる一方、朝鮮学校だけは適用が見送られた。
 その後、第2次安倍内閣の発足で当時の下村博文文部科学相が正式除外を決めた。下村氏は北朝鮮による拉致問題などを理由に挙げていた。
 大阪地裁は判決で「教育の機会均等と無関係な外交・政治的意見に基づいて朝鮮学校を排除していて違法で無効だ」と指摘した。普遍的な理念に基づいて作った教育制度なのに、政治や外交問題を絡めて例外をつくることは、文科相の裁量を超えており、許されないということだ。
 北朝鮮はミサイル開発や拉致問題などで国際社会から孤立し、日本との往来も事実上、禁じられている。しかし、それと生徒たちの学習活動は関係ない。
 民族の伝統や文化に基づく教育を受ける権利は、国際人権規約や子どもの権利条約に明記されている。大阪地裁判決は人権の原則を踏まえた判断と言えよう。
 朝鮮総連との関係で「就学支援金が授業料にあてられない可能性がある」という国の主張についても、大阪地裁は根拠がないと判断した。教育の内容面では、広島地裁は原告側が求めた証人申請を全て却下したが、大阪地裁は卒業生や元教員を証人として採用し、具体的な実情を聞いた。
 国の主張は、主に過去の報道や民事訴訟の判決からの類推に基づいていたと指摘されている。具体的な根拠を示さない姿勢を取るのであれば、説得力に欠けるだろう。
 同様の裁判は東京などの3地裁・支部で審理が続いている。無償化の理念を踏まえ判断すべきだ。
 朝鮮学校の高校部門は現在、10校が授業を行っている。授業は朝鮮語だが授業内容は日本の学校に準じ、国内の大学のほとんどが受験資格を認めている。従来以上に開かれた学校運営を進め、多様性を認め合う共生社会の拠点になってほしい。

[京都新聞 2017年08月02日掲載]

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