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犯罪被害給付  幼い遺児への支援手厚く

 犯罪被害者と残された遺族を経済的に支援する「犯罪被害給付制度」が来年度から大幅に拡充されることになった。
 原則的に支給されなかった親族間の犯罪について、18歳未満の遺児に支給の道を開くほか、まだ幼い遺児への給付金を手厚くして支援を充実する。
 最近は夫婦や親族間の犯罪が多いという印象がある。警察庁が昨年中に摘発した殺人事件(未遂を含む)770件のうち半数以上は親族間で起きているそうだ。
 ところが、現行の制度では、親子や夫婦、兄弟間など家族同士であった殺人事件の場合は、被害者や家族への給付が行われにくかった。被害者に支払われた給付金が加害者に渡る恐れがあり、社会の納得を得にくいのが理由だという。
 過半数の給付対象者を除外する社会制度はあり得ない。親の犯罪によって心に傷を背負い、突然に働き手を失った子どもが被害者として扱われないのは理解に苦しむ。親の犯罪であっても、子どもを経済的に苦しい立場に追い込むことは避けなければならない。
 子どもへの支援拡大の理由として、警察庁の有識者検討会の提言は「一般的に自活能力がないほか、精神的、経済的打撃が大きい状況が認められ、自立に向けた支援をより手厚くする必要性が高い」としている。
 制度の見直しは妥当であり、今後は国家公安委員会規則を改正する必要がある。公正で使いやすい制度設計を急いでもらいたい。
 提言では、親族間犯罪の特例として、無理心中に巻き込まれた場合、片方の親族に子どもが引き取られるなどして遺族給付金が加害者の利益にならないと判断されれば、18歳未満の遺児にも支給できるようにする。
 幼い遺児への給付金の増額は8歳未満を対象とする。現行は被害者の収入を基準に、犯罪被害の発生から10年分を支給しているのを、遺児が自立年齢に達する18歳になる年数分に支給額を増やす。
 しかし、これでは遺児の大学進学を視野に入れた制度とは言い難い。本人の進学意向や意思に応じた柔軟な形を目指すべきだろう。
 他にも離婚調停中の夫婦や暴力で支配関係にある親子など、親族関係が破綻している場合には親族間犯罪で定められた全額を支給する。児童虐待とドメスティックバイオレンス(DV)に限っていた親族間犯罪での支給枠を大幅に広げるという。
 犯罪被害給付制度は、犯罪被害に遭った本人やその遺族を社会全体で支えようと、1981年に導入された。被害者が死亡した場合、最高約3千万円が遺族に支給され、けがを負った人には治療費の支給がある。2016年度に390人に対して計8億8000万円あまりが支払われた。
 だれでも犯罪に巻き込まれる可能性はあり、給付拡大の意義は大きい。被害者への支援は、まだ道半ばである。家族観や暮らしの形は多様化しており、この意味でも制度の不断の見直しは続けるべきだろう。

[京都新聞 2017年08月13日掲載]

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