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トランプ氏発言  指導者は差別否定せよ

 白人至上主義を掲げる団体とそれに反対する人たちが衝突した米国の事件に対するトランプ大統領の対応が問題になっている。
 事件のきっかけになった集会を主催した白人至上主義者や人種差別主義者に対し、トランプ氏が事件直後に明確な批判を避けたことが発端だ。
 トランプ氏はその後改めて声明を出し、白人至上主義の秘密結社やネオナチを名指しで非難した。
 しかしその翌日、今度は「両陣営に責任がある」「白人至上主義者らにも静かに活動していた人がいて、反対派にも暴力的な人がいた」と指摘した。
 差別反対派にも非がある、どっちもどっち、と言いたげだ。やはり大統領は差別を容認しているのか。そんな批判が全米で起きている。
 差別を毅(き)然と否定することはあらゆる指導者に求められる責任である。トランプ氏の態度はあまりにも不十分で、差別の容認と受け止められても仕方があるまい。
 今月12日、白人至上主義者やネオナチ団体などが集会を開き、抗議する人たちと衝突が起きた。抗議の人たちに車が突っ込み、女性1人が死亡。30人以上が負傷した。運転していたのはネオナチに共鳴する男だったとされる。
 事件直後、地元知事は「白人至上主義者に居場所はない」と表明した。一方、トランプ氏は「各方面の暴力を非難する」と発言するにとどまっていた。
 トランプ氏は昨年の大統領選キャンペーン中、イスラム教徒や女性に対する差別的な発言を繰り返した。白人至上主義団体もトランプ氏を支持していた。
 トランプ氏が人種差別主義者らを勢いづかせた、という指摘もある。
 あらゆる人に言論や表現の自由はある。だが、他者の自由や権利を奪う表現の自由はありえない。
 国籍や出身地、肌の色や性別、障害などを理由にした排除や不公平な扱いは差別である。この認識を改めて共有したい。
 日本でも在日コリアンや外国人に対するヘイトデモが起きている。相模原市の殺傷事件は障害者差別が根底にあったとみられる。
 差別は社会を分断する。とりわけ政治指導者は危機感を持つべきだ。だが、日本の指導者が差別事件に反応することは多くない。
 「差別はいけない」という一般論にとどまるのではない。ヘイトデモなど、具体的な差別を毅然と否定する発言をしてほしい。

[京都新聞 2017年08月17日掲載]

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