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対北朝鮮政策  冷静な視点での論戦を

 弾道ミサイルの発射を繰り返す北朝鮮の脅威を訴え、政権の安定性を重視する自民、公明の与党。どう野党がただすかが焦点だ。
 「対話の試みは無に帰した」と断じ、北朝鮮への圧力を「最大限に高める」ために国民の信を問う-。それが安倍晋三首相(自民党総裁)の言う衆院解散の理由だ。
 希望、共産、立憲民主、維新、社民の各党は「自己都合だ」などと批判を強める。ただ、こうして今、与野党が溝を深めること自体に疑問がある。本来ならば「脅威」に対し、党派を超え、日本にとって最善の方策を国会の場で議論すべきところだろう。
 選挙に臨むからには、国民の危機感をあおることなく、冷静な情勢分析に基づく論戦を求めたい。
 北朝鮮は、北海道上空を通過する弾道ミサイルを今夏に2度発射し、米国本土を狙える能力の開発を加速させている。米朝の指導者同士の言葉の威嚇が激しさを増す中、先制攻撃の選択肢も排除しない米国の立場を、首相は「一貫して支持する」と表明している。
 多くの国民が懸念するのは、政権のこうした姿勢だろう。
 共同通信のアンケートによれば、外交による問題解決が最終的に困難な場合、米軍の攻撃を支持するという候補者が自民で約4割、希望で約2割、維新で約8割を占める。政党と候補者には、それぞれの立場や考えを演説などで明らかにし、有権者の判断材料とする必要がある。
 公約では、共産が「対話による解決」を政府が主導すべきと訴えている。日本のこころは敵基地攻撃能力の保有を挙げている。
 自民は3月、党安全保障調査会が敵基地攻撃能力を早期に検討すべきとの提言をまとめている。政府は専守防衛の立場から、これを保有しない方針を堅持しているが、選挙後の情勢によっては議論が進む可能性は否定できない。
 圧力路線がさらなる緊張を招き、ミサイル防衛の一層の強化を迫られることも考えられる。防衛費は6年連続で増加の見通しだ。尖閣諸島周辺での活動を常態化させている中国への対処策と併せ、どこまでの装備や役割を担おうとするのか、各党の安保観を示してもらいたい。
 拉致問題を含めて、北朝鮮をめぐる課題の解決は日本単独ではできない。重要なのは日米韓の連携、中国、ロシアの協力である。票目当ての主張や、無責任な極論は有権者に見透かされよう。

[京都新聞 2017年10月11日掲載]

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