社説 京都新聞トップへ

新景観政策10年  まちの空洞化、新課題に

 京都市の歴史的なまち並みの保全と再生を目指す新景観政策が、始まって10年となる。
 市街地のほぼ全域で建物の高さやデザイン、屋外広告物を一体的に規制する全国でも例をみない取り組みである。当初は行政が民間の資産に新たな規制をかけることに反発も強かったが、一定の理解が進み、成果もみられる。
 市は9月から、シンポジウムを皮切りに政策の検証事業を始めた。不十分な点や新たな課題に対応するため、市民にとどまらず、観光客や不動産所有者らにも協力を求め、景観政策に一層の奥行きと実効性を持たせてもらいたい。
 京都市では1980年代末からのバブル景気とその崩壊を受け、市街地に高層マンションの建設が相次いだ。2005年に施行された景観法を根拠に、市は関係条例や計画などを全面的に見直し、規制を強化する新景観政策に踏み込んだ。中心部の幹線道路沿いでも建物の最高限度を45メートルから31メートルに抑え、山裾に近づくつれ、さらに引き下げた。屋根や屋外広告物などのデザインや色彩も制限し、京町家などを保全することで、「歴史都市・京都」のまち並みを守る姿勢を強く打ち出した。
 高層建築に歯止めがかかり、新築物件は落ち着いた色彩や和風の造りが導入され、派手な看板なども激減した。この10年の取り組みは、第一段階として評価できる。
 一方、規制により都心部のマンションの価値が高まり、価格が高騰した。外国人観光客の急増がホテル需要を呼び、都心部の地価上昇に拍車をかけた面も大きい。
 新築マンションは1億円を超える物件が目立ち、東京や海外の富裕層が別荘や投機目的で買い占める事態が起きている。京町家を取り壊し、ホテルが建つ光景も広がる。若年層は市内に住めず、周辺自治体に流出していることが、市の調査で明確だ。「別荘とホテルで、まちなかから住民が消えるようなことがあってはならない」。市関係者からも危機感が漏れる。
 市は京町家の保全へ新条例を施行し、来年5月から取り壊しに事前届け出を求める。さらに、導入が決まった宿泊税に続き、市民税を払わず行政サービスを受ける別荘所有者に、負担を課す手法も研究する。効果を高めるべく、国や京都府とも連携を強めてほしい。
 新景観政策に血を通わすため、「町家」や「和風」などの外観だけでなく、地域や生活文化も考慮した「まち並み」を創造する視点も要る。官民の知恵を集めたい。

[京都新聞 2017年12月12日掲載]

バックナンバー
 
著作権は京都新聞社に帰属します。
ネットワーク上の著作権について(日本新聞協会)