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難民就労制限  柔軟、適切に認定急げ

 日本で働くための虚偽の難民申請が横行し、法務省は今週から就労許可などを制限し始めた。本当に保護が必要な難民への対応に支障が出ているためだというが、認定するべき人々を締め出してしまう恐れはないのだろうか。
 これまでは難民認定の審査中でも申請から半年後に一律に就労を認めてきたが、これを廃止。借金逃れなど明らかに難民に該当しないと判断すれば就労を認めず、在留期限後に強制退去させる。
 一方、簡易審査で難民の可能性が高い場合は速やかに就労可能な在留資格を与えるという。認定判断を迅速、効率化するのが狙いで、法務省は就労許可が申請者全体の4割程度にまで減るとみる。
 認定審査は申請から平均10カ月かかる上、不服申し立てや再申請すれば、結論が出るまで数年を要する。就労を認めるのは申請中の生活に配慮したためだ。「偽装難民」を抑制するためとはいえ、保護が必要な人まで排除することがあってはならない。相応の理由があれば、柔軟、適切に在留、就労を認める運用を求めたい。
 申請半年後の一律就労を認めた2010年の制度改正後、難民申請が急増し、本当に救済が必要な難民の認定に支障が出ている実態も否めない。法務省によると、10年の1202人から16年に過去最多の1万901人に増え、昨年は1万7千人を超えたとみられる。
 母国で抱えた借金から逃れるためなど、本来は難民申請の理由に該当しないケースも多い。申請すれば日本で働けるという情報がフィリピンやベトナムといったアジア諸国で広がり、誤用されているためで、紛争や内戦で避難を余儀なくされているシリアなどからの切実な申請は少ないという。
 制度の運用見直しはやむを得ない面がある。だが排除の手続きを速めるだけの形式的な審査では難民条約を踏まえた真の難民保護には役立たない。審査を誤って母国へ強制送還すれば命に関わる場合もあると肝に銘じてもらいたい。
 日本の難民認定は諸外国に比べ厳しい。迫害などの証明を申請者本人に強く求め、紛争などからの避難民は難民と同様に扱われない。
 難民申請が急増した10年以降も認定は6~39人にとどまり、16年の認定率は0・3%。見極めが難しいとしても国際的にみれば桁違いの低さで、日本は難民の受け入れに消極的と受け取られても仕方ない。認定制度の厳格化は「難民鎖国」との国際的な批判を一層強めないかと気掛かりである。

[京都新聞 2018年01月17日掲載]

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