社説 京都新聞トップへ

「教育」改憲案  必要性、説得力乏しい

 これで教育をどのように変えようというのだろう。
 自民党憲法改正推進本部が教育に関する改憲条文案を固めた。
 教育を受ける権利などを定めた現行憲法26条1項に「経済的理由によって教育上差別されない」との文言を挿入し、新設する3項に教育環境を整備する努力義務を国に課す内容だ。教育の無償化は、財源難を理由に明記しなかった。
 経済的理由による教育上の差別禁止は、すでに教育基本法に盛り込まれている。無償化について、政府は中等・高等教育への段階的導入を掲げた国際人権規約を承認している。同党は昨年の衆院選で無償化を公約に掲げていた。
 現行法にある内容を改憲項目に加えながら、国際公約や選挙公約である無償化は明記しない-。条文案は一貫性に欠けると言わざるを得ない。本当に改憲が必要なのかどうかの説得力に乏しい。
 無償化に関しては、党内でも慎重論が根強かった。幼児教育から大学など高等教育までの全課程を無償にするには毎年4兆円超の予算が新たに必要との試算もある。
 一方で、日本の教育への公的支出が国内総生産(GDP)に占める割合は、経済協力開発機構(OECD)加盟各国の中で最下位(2014年)だ。多額の奨学金返済に苦しむ学生も少なくない。教育をめぐる格差は拡大している。
 憲法の条文を変えれば、こうした現状を改善できるのだろうか。むしろ健全財政に努め、教育に回す資金をいかに確保するかに国民的な議論が必要ではないか。
 条文案3項に、教育が「国の未来を切り拓く上で極めて重要な役割を担う」との文言が加えられたことにも違和感がある。こんな「定義」をされては、国家の役に立たないとされた学問や考え方が教育現場から排除されかねない。
 自民が改憲項目に教育を掲げた背景には、改憲の国会発議に向けて教育無償化などを掲げる日本維新の会の協力を得ようとの思惑が垣間見える。
 経済的理由で教育を受ける機会を奪われないことなどを掲げる維新の改憲案の一部を「つまみ食い」する形で多数派形成をしようとするのなら、条文案の趣旨とは裏腹に、教育を重視していないと批判されても仕方ない。
 先日の参院選「合区」解消に向けた案も含め、自民の改憲に向けた議論は粗っぽい印象を受ける。
 国の最高法規を変更しようとするプロセスがこんな調子で進んでいくのは、とても気掛かりだ。

[京都新聞 2018年02月23日掲載]

バックナンバー
 
著作権は京都新聞社に帰属します。
ネットワーク上の著作権について(日本新聞協会)