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カジノ与党合意  不安と疑問に向き合え

 カジノを含む統合型リゾート施設(IR)実施法案を巡る与党協議が決着し、27日に国会提出の方針となった。ギャンブル依存症などに対する国民の不安が拭い去られないまま、カジノ解禁に向けた手続きが進むのは問題だ。
 与党合意では、日本人客のカジノ入場料を6千円とし、入場回数を週3回、月10回までとした。さらに全国のIR整備箇所数を最大3カ所とすることや、カジノのフロア面積をIR全体の3%以下とすることも盛り込まれた。
 焦点となった入場料は当初の政府案では2千円だった。公明党が安易な入場を抑制するための「世界最高水準のシンガポール並み(約8千円)」を主張し、それに近い水準で決着した。自民党は整備箇所数も「4、5カ所」との旗を降ろし、公明案をのんだ。
 政府は法案の会期内成立を目指し、当初は3月初めの国会提出を想定していた。「森友学園」問題で算段が狂い、妥協を急いだ。規制の実効性に関する肝心の議論は深まらなかった。
 これで国民の理解が得られるとは到底思えない。共同通信が3月に実施した世論調査では解禁に反対が65%を占めた。治安悪化につながらないか、地域振興に本当に効果があるのか、そもそも訪日観光客がカジノを求めているのか…多くの疑問は残されたままだ。
 賭博の機会がある限り「回復するが治癒はしない」とされるギャンブル依存症。6千円の入場料も専門家からは、重度の依存症の場合、高額な入場料を取り戻そうとのめり込むため、抑止力にはならないとの指摘が出ている。
 しかし、与党協議が決着したことで、今後は自治体の誘致活動も本格化するとみられる。名乗りを上げている4道府県のうち、とくに「最有力」とみられる大阪府の松井一郎知事は「事業者の投資意欲をそぐ」と規制の厳格さに不満を示した。京都、滋賀の住民にとっても気掛かりだ。
 実施法案の前提となるIR整備推進法は、2016年12月の臨時国会でわずかな審議時間で採決され、成立した。性急な議論、強引な国会運営が繰り返されることがあってはならない。
 野党4党はカジノ反対の立場を鮮明にしており、公明党も継続審議となっているギャンブル依存症対策基本法案の取り扱いを優先するよう求めている。まず国民の不安と疑問に向き合い、カジノが本当に必要なのかどうか根本的な議論を深めてほしい。

[京都新聞 2018年04月07日掲載]

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