社説 京都新聞トップへ

児童虐待対策  連携の力で悲劇なくそう

 深刻化する児童虐待を防ぐには、子どもたちのSOSを出来るだけ早く見つけ、対処する必要がある。そのためには、関係機関や地域の緊密な連携、協力が欠かせない。
 特に生命に危険が及ぶような緊急を要する場合には、児童相談所(児相)と警察との連携が重要になるが、児相が虐待の恐れを把握しながら、警察に知らされないまま児童が死亡するケースが後を絶たない。
 東京都目黒区で「ゆるしてください」と書き残して死亡した船戸結愛ちゃんも、都から警視庁への情報提供に至らなかった。事件を受けて政府や自治体も対策の強化に動き始めたが、悲劇を繰り返さないよう、実効性のあるものにしなければならない。
 昨年、全国の警察が児童相談所に通告した18歳未満の子どもは、統計を取り始めた2004年以来、初めて6万人を突破した。生命の危険がある緊急時や夜間に警察が保護した子どもも5年連続で増え、4千人近い。
 ただ、警察が把握した虐待の疑いがある事案は、児童虐待防止法に基づき、全て児相に通告されるが、児相から警察への情報提供を定めた法律はなく、児相を設置している自治体の裁量に委ねられている。
 結愛ちゃんは、以前住んでいた香川県善通寺市で、2度にわたって児相に一時保護され、父親も結愛ちゃんへの傷害容疑で2回書類送検されていた。
 それでも県の児相から引き継ぎを受けた東京都の児相は、都の基準に該当しないとして警視庁と情報共有をしなかった。児相同士や警察との連携が適切だったか、十分な検証が必要だ。
 共同通信の調査では、児相を設置する全国の69自治体のうち児童虐待が疑われる事案の全件について警察と情報共有している自治体は、茨城、愛知、高知の3県にとどまる。結愛ちゃん事件を受けて、岐阜、埼玉両県も全件共有の方針に切り替えたが、まだまだ少ない。
 加えて半数近くの自治体は、情報提供の基準を設けていなかった。一時保護の際に保護者の強い抵抗が予想される場合などには、警察との連携が重要になる。迅速に対応するためにも、普段からできるだけ情報を共有しておくことが必要だ。
 警察との全件共有には「親族が警察に共有されることを嫌がり、通報が減る可能性がある」「本当に必要な事案が埋もれる」などの慎重な意見もあるが、増え続ける児童虐待に児相だけでは、対応に限界があるのも事実だろう。
 16年度に全国の児相が対応した児童虐待は12万件を超え、国は法改正などで児相の体制や権限を強めてきたがマンパワーが追いついていない。
 専門家からは、児童虐待の実情は児相の対応能力を超え、検察・警察、裁判所との間で職務の配分を根本的に見直す必要があるとの指摘が出ている。保育、教育など子どもと多くの関わりを持つ市区町村の対応強化も欠かせない。
 政府は来月にも緊急対策をまとめるが、弥縫(びほう)策に終わらせず、本腰を入れて子どもの命を守る方策を検討してほしい。

[京都新聞 2018年06月17日掲載]

バックナンバー
 
著作権は京都新聞社に帰属します。
ネットワーク上の著作権について(日本新聞協会)