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核禁条約1年  被爆国から世論動かせ

 核兵器禁止条約の採択から1年が過ぎた。
 採択の原動力となった非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」がノーベル平和賞を受賞し、条約の存在感は格段に増したとはいえ、批准したのは11カ国・地域にとどまる。発効には50カ国以上の批准が必要で、批准が遅れ気味なのは残念だ。
 核禁条約は史上初めて、核兵器の製造や使用、実験、移転などを全面的に禁止する。昨年7月、国連加盟国の6割を超える122カ国・地域が賛成し、採択された。ところが、核拡散防止条約(NPT)を重視する米国やロシアなど核保有国は強く反対してきた。
 国際NGO関係者によると、米国は水面下で条約を批准しないよう経済支援を必要とするアフリカや中南米諸国に強い圧力をかけている、という。批准まであと2~3年を要するとの見方もある。
 批准を拒むのは核保有国だけではない。米国の「核の傘」に依存する日本や欧州の国々も米国の顔色をうかがうばかりだ。
 日本は条約から距離を置き、核廃絶を目指す姿勢が全く感じられない。唯一の戦争被爆国であり核保有国と非保有国の「橋渡し役」を自任する国として、あまりにも後ろ向きと言わざるを得ない。
 抑止力に頼る限り、核兵器はなくならない。条約採択の背景にはNPT体制の下で、核保有五大国が特権を持ちつつ義務を果たさず、核軍縮が進まないいら立ちがあることを忘れてはならない。
 ストックホルム国際平和研究所によると、1月時点で世界の核弾頭数は計1万4465個に上る。前年比で470個減少したが、米ロが約9割を保有する構図は変わらない。削減ペースが遅い上、保有国は兵器の近代化を進めている。加えて米国は2月に「使える核兵器」と称される小型核の開発を打ち出し、核の危機が現実味を増しているのが気掛かりだ。
 昨年のノーベル平和賞が条約採択に尽力したICANに贈られたように、核廃絶は世界の人々の願いである。非核保有国だけでなく、保有国も巻き込んだ条約とし、実効性を高めていかねばならない。世界の人々の関心をさらに広げ、国際世論を高め、核保有国の指導者たちを動かしたい。
 広島、長崎への原爆投下から来月で73年。道のりは長く険しくとも、被爆者が生きているうちに核兵器と決別する道筋をつけねばならない。「核なき世界」を死語にしてはなるまい。

[京都新聞 2018年07月11日掲載]

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