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退位意見聴取  丁寧、オープンな議論を

 天皇陛下の退位を巡る政府の有識者会議が専門家16人からの意見聴取を終えた。月内に2回の会合を開いて論点を整理し、年明けに公表、与野党が国会で協議し、春ごろまでに提言をまとめる予定という。憲法は天皇の地位を「国民の総意に基づく」と定める。国民が理解を深め、議論に参加できるよう、「討論型世論調査」などを実施することも考えてほしい。
 歴史学者や憲法学者、ジャーナリストらを招いた意見聴取は11月中に3回に分けて行われ、退位の是非や退位の恒久化の是非だけでなく、天皇の公務のあり方や高齢になった時の負担軽減策など8項目について見解を聞いた。
 退位については、条件付きも含めて9人が容認・賛成で、7人が慎重・反対となった。
 賛成・容認では「高齢社会を迎え、退位を認めるべき」「象徴の務めが困難になった場合は譲位が望ましい」などの意見があり、慎重・反対では「譲位は政治利用される恐れがある」「摂政制度を活用すべき」などが聞かれた。
 陛下は8月に退位への思いをにじませたビデオメッセージで国民に語りかけられ、今回の制度改革を巡る議論が始まったが、この評価についても意見が割れた。憲法が禁止する政治関与の容認にあたるとの判断がある一方、政治性を否定する声もあった。
 ここまで大きく分かれた意見をまとめるのは容易ではあるまい。有識者会議座長代理の御厨貴・東京大名誉教授は「議論を寄せていくことは可能だ」と述べているが、結論ありきではない丁寧でオープンな議論を望みたい。
 退位の恒久化も重要な論点だ。そのためには皇室典範の改正が必要になる。政府は、退位を一代限りとする特別法での対応を目指しており、賛成・容認を表明した7人のうち5人が支持している。陛下の年齢と皇太子さまへの継承の準備期間などを考えれば、法的整備を急ぐ必要があり、やむを得ない面もある。
 ただし、皇室制度の将来を巡る議論は避けて通れない。小泉純一郎首相時代の2005年には「女性・女系天皇」、旧民主党の野田佳彦首相時代の12年には「女性宮家の創設」が取り上げられたが、いずれも立ち消えになった。
 10月に昭和天皇の弟三笠宮さまが亡くなられ、皇位継承資格者は4人に減った。象徴天皇制を維持していくには、いずれ皇室典範の改正に取り組まなければならない。腰を据えた議論が必要だ。

[京都新聞 2016年12月02日掲載]

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