社説 京都新聞トップへ

高浜の抗告審  事故の不安消し去れぬ

 関西電力高浜原発3、4号機(福井県)の運転を差し止めた大津地裁の仮処分決定を巡り、大阪高裁は関電の抗告を認めて処分を取り消し、2基の再稼働に道を開いた。
 稼働中の原発を初めて止めた地裁決定が1年余りで覆され、関電は再稼働への手続きを進めると表明した。
 高裁決定は、安全対策が相当の根拠と資料に基づいていて合理的だとし、原子力規制委員会の判断を追認した形だ。だが、取り返しがつかない福島第1原発事故の過酷さを目の当たりにした国民の不安を消し去れるものではないだろう。二度と起こさない安全性をどう確保すべきか、重い問いは続いている。
 地裁と判断を分けた焦点が安全対策の評価だ。大津地裁は、地震や津波対策などで「関電は安全性を立証していない」と指摘。福島事故後に策定された新規制基準にも疑問を投げかけ、異議や執行停止も退けた。
 抗告審で関電は巻き返しを狙い、千ページを超える書面を提出して妥当性を強調してきた。
 大阪高裁は、新規制基準と関電の安全対策は「事故の教訓を踏まえ、最新の科学的、技術的知見に基づき、不合理でない」と判断。住民側が過小評価と指摘した地震想定や津波対策も適切とした。専門性の高い規制委の判断を尊重すべきとの姿勢がうかがえる。
 だが、福島事故は6年を経ても約8万人が避難し、底知れぬ事故の実相と廃炉、被害回復の困難さを思い知らされるばかりだ。たとえ原発が効率的、経済的でも過酷事故の災禍と引き換えにできない-という大津地裁の問い掛けに対し、説得力のある答えと言い難い。
 住民の避難対策の遅れを容認したのも看過できない。大津地裁は避難計画の実効性を規制対象にすべきとしたが、大阪高裁は過酷事故防止の確実性が高まっているから逐次改善すればいいとする。
 それこそ葬り去るべき「安全神話」ではないか。昨夏の国と京滋などの合同訓練は悪天候で一部が中止され、今冬も大雪で避難路が使えない事態に住民の不安は強い。
 政府の推進姿勢を背に、全国で原発再稼働の動きが加速している。新基準向けの対策を並べ、「合格」が相次ぐが、1月に高浜原発で大型クレーンが転倒した事故などを見ても安全態勢が本物か疑わざるを得ない。
 安全性への司法判断が分かれる中、経済性にも疑問符が付く原発依存の見直しは国も電力会社も避けられない。

[京都新聞 2017年03月29日掲載]

バックナンバー