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シリア内戦  停戦の努力を継続せよ

 シリアのアサド政権と反体制派の停戦が崩壊状態に陥っている。
 米国とロシアが仲介した停戦合意は、12日の発効から1週間しか持たず、政権軍が北部の激戦地アレッポへの空爆を強め、各地で戦闘が再燃している。極めて憂慮すべき事態だ。
 長い内戦のため合意履行には当初から不安があったが、戦闘拡大で市民の犠牲と生活破壊が深刻になっている。
 アサド政権の後ろ盾のロシアと、反体制派を支援する米国は非難合戦に終始せず、事態収束の責任を果たすべきだ。喫緊の人道支援とともに、国際社会が協力して停戦の努力を続けねばならない。
 停戦が崩れた転機は、17日に政権軍兵士が多数死亡した米軍などの「誤爆」だ。反発したアサド政権は19日に停戦終了を一方的に表明し、反体制派が支配するアレッポ東部を中心に空爆を再開した。
 国連によると、本格化した23日以降の死者は213人に上り、特殊爆弾も無差別に使用した「前例のない」規模と批判している。
 アレッポ郊外では支援物資を運ぶ国連などの車列も政権側によるとみられる空爆を受けた。政権やロシアは関与を否定し、緊急の国連安全保障理事会でも批判の応酬で打開の糸口がつかめずにいる。
 そもそも今回の停戦は人道支援が重要な目的で、泥仕合を続けている場合ではない。アレッポ東部では最大27万人超が政権軍に約20日間も包囲された状況で食料、燃料の不足が深刻だ。民間の救助拠点や水道施設も破壊され、医療、健康面の不安も高まっている。
 米ロは今年2月にも停戦合意を主導したが、数カ月で崩れ去った。停戦の実現後、協力して過激派組織「イスラム国」(IS)を掃討し、移行政権につなげる構想がかすみつつある。
 5年半に及ぶシリア内戦の死者は27万人以上、国内外の避難民は1100万人以上に上る。米ロや周辺国による影響力拡大の思惑が事態を複雑化させ、ISの台頭も招いた責任は重い。
 オバマ米大統領は残り少ない任期中に和平の道筋を付けられるよう手を尽くすべきだ。ロシアは米政権の移行期につけ込むような振る舞いを慎まねばならない。
 内戦に傷つき、苦しむシリアの人々を見放すことは許されない。速やかに支援物資を届け、停戦の実現に全力を挙げる必要がある。日本は先の難民問題の国連サミットで2800億円の支援を表明しており、人道援助を通じ内戦収束の国際環境づくりを進めたい。

[京都新聞 2016年09月28日掲載]

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