社説 京都新聞トップへ

中ロ接近  「反米」共闘なら危うい

 中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領が北京で会談した。両首脳はその2日前にウズベキスタンで会ったばかり。プーチン氏は「今後も緊密な共同歩調をとる」と、蜜月ぶりを演出した。
 会談では、英国の欧州連合(EU)離脱への対応のほか、北朝鮮問題、シリア情勢などを議論し、エネルギーやインフラなど30分野以上の協力文書に署名したという。
 全体を通して際立ったのが米国中心の国際秩序への反発だ。習氏は「国際問題や地域紛争で力の行使や武力威嚇、制裁、当事国の同意を得ない一方的な行動に反対する」と述べ、フィリピンなどと領有権を争う南シナ海問題に日米が介入するのをけん制する一方、ウクライナ危機で欧米が発動した対ロ経済制裁を批判した。
 両氏は「核心的利益」すなわち領土問題でも互いの立場に支持を表明した。「力の行使」による南沙諸島やクリミア半島の支配を既成事実化しようとする中ロの共闘には脅威を感じざるをえない。
 中ロは反米を掲げるイランとも接近している。プーチン氏は昨年11月、50億ドルの支援を表明。習氏は今年1月、テヘランを訪ねて高速鉄道整備で合意した。
 米ソ冷戦の終結後、米国は唯一の超大国として「世界の警察官」を任じてきた。しかし、中国が経済的・軍事的に急速に力をつけ、国際秩序は必ずしも米国中心ではなくなりつつある。
 共同声明には「中ロは第2次世界大戦の戦勝国として、その成果をしっかりと守り、歴史を否定またはゆがめようとする動きに反対する」との一節もある。歴史認識について日本の右派をけん制しつつ、北方四島など領土問題では譲歩しないという意思表示だろう。
 安倍晋三首相はプーチン氏と会談を重ねて北方領土を外交交渉に乗せたい意向だが、中ロ共闘の現実を目の当たりにすると夢物語に思える。資源価格の下落で経済不振のロシアが、領土問題を「餌」に天然ガスを日本に売り込もうとしているのは明らかだ。対ロ外交のあり方を考え直す時期ではないか。
 イランなど反米国を巻き込んだ中ロの接近は、いや応なく米国中心の今の国際秩序を不安定にしてしまう。米国という「抑え役」の力が低下すれば、各地で紛争や民族対立が頻発する恐れもある。
 今秋、20カ国・地域(G20)首脳会合が中国・杭州で、日中韓首脳会談が日本で開かれる。そうした場で、国際社会が結束して覇権主義にくぎを刺さねばならない。

[京都新聞 2016年06月29日掲載]

バックナンバー