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最低賃金  抜本的な引き上げ策を

 全ての労働者に適用される賃金の下限額「最低賃金」について、国の審議会は全国平均の時給で24円引き上げ、822円とする目安をまとめた。
 5年連続の2桁増で、時給で示す現行方式となった2002年度以降で最大の上げ幅だった15年度の18円を上回った。パートなど非正社員は最低賃金近くで働く人も多く、引き上げは幅広く波及する。
 景気浮揚につなげたい政府の意向を反映した形だが、目標に据える千円にはほど遠く、働く人の暮らしの底上げには不十分だ。負担が増す中小企業への支援策を含め、さらなる引き上げへの手だてと道筋を示すことが必要だ。
 最低賃金は国の目安を参考に都道府県ごとに定め、下回る企業には罰則が科される。中央最低賃金審議会の小委員会がまとめた目安は、経済規模などに応じ21~25円の4段階の上げ幅とした。京都、滋賀は24円で、目安通りなら京都831円、滋賀788円となる。
 経営側は大幅増に難色を示したが、安倍晋三首相が「1億総活躍プラン」に盛り込んだ3%引き上げに沿う内容で決着した。連合や経団連の調査では今春闘の賃上げは定期昇給を含め平均2%超で、それを上回る格好だ。
 だが、フルタイムで働いても月収は14万円程度。賃金格差は大きいままで、労働意欲や生活の向上は望みにくい。近年の増額も物価の上昇に追い付かず、暮らしの実感に近い実質賃金は4年連続で目減りしているのが現実だ。
 最低賃金引き上げは低所得層にじかに届き、低迷する消費底上げの鍵とされる。政府は20年ごろまでに平均千円を掲げ、参院選で与野党とも千円以上と訴えたが、多少の上積みではとても届かない。
 さらに今回、最高額の東京と最も低い鳥取、沖縄など4県との差は218円まで開き、地方創生の看板と裏腹に広がる一方だ。地方を底上げし、引き上げを加速する抜本的な方策が求められる。
 それには負担増を懸念する中小企業への後押しが重要だ。政府は、人件費増の一部を補助するなど支援強化を経済対策に盛り込む方向だが、継続的な賃上げには生産性を高める投資支援や下請け価格の適正化、正社員登用の促進策など、政策の総動員が必要だろう。
 人手不足が強まる中、待遇改善は企業、地域の活力を左右する課題だ。最低賃金を決定する都道府県の審議会は、地域活性化を見据え、国の目安を上回る積極的な引き上げを検討してほしい。

[京都新聞 2016年07月28日掲載]

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