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国有地の売却  不透明な経緯解明せよ

 貴重な国民の財産が、なぜ「ただ同然」で払い下げられたのか。 大阪府豊中市の国有地が、4月に小学校開設を計画する学校法人に評価額の14%で売却された。国は「適正に処分した」とするが、不透明な売却の経緯から会計検査院も検査に乗り出す構えだ。
 新設予定校は、安倍晋三首相の名を使って寄付金を集め、名誉校長は妻昭恵さんが務める。首相は関与を否定するが、政治的な働きかけや特別扱いがなかったかも野党側は追及を強めている。徹底した疑惑の解明が必要だ。
 売却地は8770平方メートルで、大阪空港の騒音対策のため国土交通省大阪航空局が保有していた。公募に応じた学校法人「森友学園」と交渉した近畿財務局が昨年6月、随意契約により1億3400万円で売却した。不動産鑑定士による更地の評価額9億5600万円から8億円超の大幅値引きだ。
 地中深くに廃材や生活ごみがあったと学園が申告し、大阪航空局が撤去費を8億2200万円と見積もり差し引いたと言う。別に汚染物質があった浅い土壌の入れ替え費用1億3100万円が学園に支払われており、売却で国に入ったのはわずか200万円ほどだ。
 問題は、国が地中のごみをどう確認し、撤去費を算定したか根拠を明確にせず、実際にかかった費用も把握していないことだ。
 学園の理事長は、共同通信の取材に撤去費は8億円を下回る旨を述べ、国の算定の妥当性が揺らいでいる。公募売却なのに異例の借地契約で着工後、入札を経ない随意契約で売却されたのも解せない。隣接する同規模の国有地は7年前、豊中市が公園用地として14億円強で購入している。
 国は当初、学園側の意向を理由に売却額を公表せず、野党の追及を受けて一転、開示した。極めて公共性が高い国有地処分の公正さ、透明性の確保に情報公開は欠かせない。公にしたくない国の後ろめたさを勘ぐらざるを得ない。
 売却先の学園は運営する幼稚園で「教育勅語」を暗唱させるなど復古的な教育内容で議論を呼んだ。大阪府に学校設立認可を答申した審議会でも教育方針や財務面で適格性を疑問視する声が相次いだ。
 安倍首相は寄付金集めへの協力を否定し、身辺で払い下げなどに関与があれば「首相も国会議員も辞める」と断言した。ならば昭恵さんが名誉校長に就いた経緯を含め、進んで説明責任を果たすべきだろう。事実解明には学園理事長らの国会招致も不可欠だ。

[京都新聞 2017年02月24日掲載]

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