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豊洲・築地共存  政策の詰め甘く心配だ

 東京都の築地市場(中央区)の豊洲市場(江東区)への移転問題について、小池百合子知事が基本計画を示した。市場を豊洲に移転したあと、築地は売却せずに5年後をめどに観光拠点として市場機能を持たせて再開発する内容だ。 豊洲新市場には汚染対策費を含めて整備費6千億円がすでに投じられている。しかも、毎年92億円の赤字が見込まれる。築地市場を売却して資金を得る計画は白紙に戻して、「食のテーマパーク」として新しい施設で再生するという。
 築地市場は開場から82年になって、手狭で老朽化したことを理由に2キロ余り離れた豊洲市場が新設された。しかし、施設の地下部分に設計通りに盛り土がなく、ベンゼンなどの汚染物質が相次いで検出され、東京都は昨年8月に移転延期を決めていた。
 いくら東京都とはいえ、二つの中央市場は必要なのか。取り扱いの仕分けもなく、構想は場当たり的にすぎないか。
 新市場の資金調達の方法も示さずに、豊洲移転の具体的な時期についても、会見で明言を避けた。旧知の一部顧問とは話を重ねたものの、都庁幹部との協議不足は明らかだ。政策の詰めが甘く、実現性は見通せない。
 小池知事は、「築地は守る、豊洲は生かす」を基本方針にしたという。移転延期後、市場関係者は豊洲への移転を希望する人と築地残留派に分かれていた。23日告示の東京都議選を直前に控え、小池知事が緊急会見で方針を示した。
 移転を巡って「何も決められない知事」として小池知事への批判を強める自民党に対して違いを演出したのだろうが、関係者には玉虫色の決着にしか映らない。
 いったん豊洲に移った業者が再び築地に戻る際の費用負担も大きい。冷凍や冷蔵施設が必要なことを考えれば、わずか5年ほどに2度の引っ越しは酷だろう。年々、取扱量が減少しているのも気掛かりだ。
 それでも築地は国内最大規模の市場で、各地から魚介類や青果が集まる。その将来像は首都圏だけでなく、全国の産地に影響する。築地は銀座にも近く、日本の魚食文化を代表する市場として外国人観光客が多く訪れる。
 最も大事なのは安全性の確保だろう。豊洲の安全をどう確かめるのか。地下水は食品には直接は触れないとはいうものの、「風評被害」をぬぐい去るには時間と工夫が必要だ。豊洲の「安全宣言」が優先すべき課題だ。

[京都新聞 2017年06月22日掲載]

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