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所信表明演説  政策の具体性が乏しい

 安倍晋三首相が国会で所信表明演説を行った。北朝鮮情勢への対応や少子高齢化対策の実施などに強い決意を示した。
 憲法改正に関しても「与野党の枠を超えて、建設的な議論を行い、共に進んでいこう」と呼び掛け、議論前進への意欲を示した。
 安倍首相が強調したのが「政策」である。「政策」を12回使い、最後は「政策の実行、実行、実行あるのみ」と連呼して結んだ。
 与党の絶対安定多数を背景に、自身の政策を実施していきたい。そんな思いを伝えたかったようだ。だが全体として総花的で、説得力を欠いた感は否めない。
 「政策」をどう実施するのかを、具体的に語らなかったからだ。
 北朝鮮の核・ミサイル開発問題について、米国と連携を強化して「圧力」を強める決意を強調した。しかし、朝鮮半島の非核化の道筋には踏み込まなかった。
 「圧力」に理解を示す国民も、武力行使を是認しているわけではない。具体論を語らない姿勢からは、フリーハンドを保持したい首相の意図が透けて見える。
 消費税増税による税収増の使い道の変更では、子育て世代への投資と社会保障の安定化に充てると同時に、財政健全化も進めると強調した。
 子育て世代への投資増は歓迎だが、当該の子どもたちの将来負担にならないのか。そうした懸念に答えていないのが気になる。
 首相自身の悲願でもある憲法改正には演説の最後に触れたが、与野党に論議への参加を呼び掛けるにとどめ、違和感が残った。
 首相は憲法をどう変えたいのか。自民党はすでに改憲草案を作成しているが、自身が提案した「9条に自衛隊の存在を明記する」案との整合性が問われている。踏み込んで語るべきではなかったか。
 安倍首相は選挙後、「謙虚で真摯(しんし)な政権運営にあたる」と述べた。だが、きのうの演説には「謙虚」も「真摯」も盛り込まれなかった。
 内閣支持率は回復傾向にあるが、安倍首相への信頼は揺らいでいる。
 最新の世論調査では、安倍首相に来年秋の自民党総裁選で3選を果たして首相を続けてほしい、と答えたのは41%で、51・2%が続けてほしくない、と回答した。
 国民が本当に知りたいことを避けていては、信頼の回復は望めまい。
 20日からは各党による代表質問が行われる。首相は国民の問いに正面から向き合ってほしい。

[京都新聞 2017年11月18日掲載]

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