先輩社員からのメッセージ

10字に託す見出し


ニュース編集部 宇都寿
兵庫県出身 2009年入社
滋賀北部総局や報道部を経て、16年から現部署
ニュース編集部 宇都寿

 降版間近。紙面を組んでいる目の前のパソコン画面は真っ白。記事の見出しが何も思い浮かばない。脂汗がにじむ。焦る一方で手は動かない。時間が進む。やばい―。いつもそこで目が覚める。

 見出しや写真の大きさを検討して、紙面を完成させるニュース編集部。朝刊1部に新書1冊分の情報量があるとされる記事を「整理」する作業を担う。取材現場から異動して2年近くになる。「これにうなされれば整理記者」と上司や先輩に言われた夢をよく見るようになったが、現実世界では、一人前の整理記者に遠く及ばないことを実感する日々だ。

 失敗はたくさんした。迫る締め切り時間を理由に、安易な見出しに逃げた。誤字のまま紙面化したこともあった。「関係者が見たらどう思うか」。デスクに言われた言葉を今も戒めにしている。天皇退位報道や震災忌など、社会の節目の日にも紙面を担当したが、他紙を見てため息しかでなかった。

 記事1本あたりの量は30行から100行程度だ。つまり数百字から千字超で社会に起きている出来事や喜怒哀楽を1本の記事にして伝えることが、外勤記者の仕事。一方、整理記者が1つの見出しに使えるのは、10字が基本になる。何本かの見出しを組み合わせても数十字ほど。句読点にすら意味を託す。

 だから1行2行ではなく、1字2字への思いは強くなった。この言葉が本当に適切か。ほかに言い換えはできないか。紙面に何か一つでも凝った言葉を使えないか。電子辞書は電池の減りが一層早くなった。

 降版間近に作業端末の画面が埋まらないという状況は現実に起こる。新たなニュースが飛び込んでくれば、紙面計画は一からやり直し。安全策の見出しが頭をよぎる。その度、「間違いのない言葉より強い言葉」と言い聞かせて記事を見直す。夢ならいいのにと願いながら。


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