水の環〜自然・暮らし・ひと〜 使い回し−水の循環利用

桂川を水鳥が舞う。河畔林や水草の茂みは魚や鳥、小動物の命をはぐくむ大切な場所だ(京都市南区)
左=世界最小のネズミ「カヤネズミ」。河川敷整備や不法耕作などで繁殖地が減っている。
右=オギの葉の間に作られたカヤネズミの球巣。中には柔らかいオギの穂が敷かれ、ふとんの役割を果たす(京都市南区・桂川河川敷)

 自然の川と私たちの暮らしが接する河川敷を、いま見直す動きが始まっている。河川敷を利用したグラウンドや公園は私たちにとっては憩いの場だが、またそこは多様な生き物が命をはぐくむ大切な場所でもある。生い茂る雑草も、小動物にとっては大切なえさ場であり、寝床だ。京都市内の桂川河川敷を歩きながら、川と人の関係を考えてみた。

人と生物の共有空間

 「あった」。世界最小のネズミ「カヤネズミ」の巣を探しながら進んでいた保護団体「全国カヤネズミネットワーク」の畠佐代子代表(34)=京都市西京区=が立ち止まった。南区の桂川河川敷。枯れたオギやセイタカアワダチソウの茂みのすき間に、枯れ草でできた野球ボール大のかたまりが見える。

 巣の様子をそっと観察しながら、畠さんが「カヤネズミはオギやチガヤの葉を編んで巣を作る。一番外側は途中まで割いた葉を使って編んで固定するから、葉の間に浮いているように見える」と教えてくれた。巣は空っぽ。夏の間は巣の中で過ごし、冬は雑草の下や土の中に隠れて寒さをしのぐという。

水の環-トーク
本来の姿に復元すべき
トーク−三重大学人文学部非常勤講師−川上聰さん
三重大学人文学部非常勤講師
川上 聰さん

豊かな生態系の証拠
探鳥会で児童ら実感


写真=探鳥会で望遠鏡をのぞいて鳥を観察する桂徳小の児童や保護者たち

「桂川にはハイタカやオオタカなどの猛きん類もたくさん来る。食物連鎖のトップに位置する鳥が来るのは、豊かな生態系の証拠…◎全文


【どうなる スポーツ楽しむ場】
桂川の河川敷には、市民が気軽に運動できるグラウンドやテニスコートなどが多く見られる。…◎全文

 カヤネズミは体長5−6センチ、体重は7−8グラムで夜行性だ。春や秋に小指の爪ほどの大きさで生まれたあと、約2カ月で成長し、冬季も活動する。エノコログサの実やバッタなどの昆虫が好物だ。関東地方から中国地方を中心に九州まで幅広く分布し、桂川は全国でも有数の繁殖数を誇る。

カヤネズミ 営巣が減少 不法投棄など原因

 だが近年は、巣づくりには使えないセイタカアワダチソウなど外来植物が繁殖する。さらに野焼きやごみの不法投棄などもあり、生息地がどんどん狭くなっている。不法耕作もカヤネズミの巣への攻撃になる。

 全国カヤネズミネットワークは1998年からカヤネズミの生息数を毎年調査している。その調査によると、99年と2002年に同じ場所で撮影した写真を見比べると、営巣場所の減少ぶりが明らかという。

 01年と02年は少雨の影響で河川敷への冠水がなく、地面が乾燥したため、乾いた土壌に育ちやすいセイタカアワダチソウが増えたのが、営巣減少の一つの理由と考えられる。

 「私たちにはただの雑草でも、彼らにとっては大切な食べ物や寝ぐら。河川敷が人間だけのものでないと知ってほしい」。6年前からカヤネズミの生態を見守り続けている畠さんが訴える。(2004.1.28)