日本がリーダーシップを
気候変動政府間パネル
ボリン議長に聞く
地球温暖化がアジア・太平洋地域に及ぼす影響を話し合うワークショップに出席するため来日中のバート・ボリンIPCC(気候変動に関する政府間パネル)議長は12日、東京都内のホテルで京都新聞社との単独インタビューに応じた。ボリン議長は、12月に京都で開かれる地球温暖化防止京都会議(気候変動条約第3回締約国会議)について、「2010年までに温室効果ガスを15%削減するというEU(欧州連合)の提案が京都議定書の出発点になる」との見通しを示すとともに、議長国となる日本のリーダーシップを強く求めた。(社会部 山内康敬)
「15%削減」が出発点
京都議定書
―地球温暖化に関するIPCCの第2次報告書(1995年)は、21世紀末に気温が2度上昇と予測したが、前回報告書(90年)の2.5度から下方修正したのはなぜか。
地球温暖化は、石油や石炭の大量消費によって大気中の二酸化炭素濃度が上昇するのが原因だが、同時に大量のススも出る。ススは太陽の光をさえぎり、大気を冷却するが、その効果を計算できなかった。ただ、二酸化炭素が大気中に数百年とどまるのに対し、ススは1、2週間で雨に洗い流される。ススを多く含む石炭を使えば結局、温暖化の加速に手を貸すばかりか、深刻な酸性雨被害を招く。
―地球温暖化でどんな影響があるのか。
世界のどこで何が起こるか、はっきり言うことは難しい。一般的に水の蒸発散が活発になり、地球全体として降水量が増える一方、干ばつや洪水など異常気象が増えるとみられる。北極圏では気温の上昇が他より激しく、すでにカナダやロシアの北部、アラスカ、北欧では気温上昇がはっきり現れている。
―地球温暖化を食い止めることはできるのか。
温暖化はもはや避けられない。しかし、大気中の二酸化炭素をこれ以上増やさないことで、温暖化のスピードを落とし、被害を「がまんできる範囲」に抑えることはできる。
―産油国などは「地球温暖化の予測は不確実」として、二酸化炭素の排出削減に反対している。
大気循環は複雑で、雲や海洋の役割もよく分かっていない。が、不確実性を理由に将来にわたる大きな危険を無視するのは賢明でない。予防的見地から今すぐ対策を始めるべきだ。
―具体的にどんな対策が考えられるのか。
第1段階として、化石燃料の使用を抑えるため省エネを徹底し、エネルギー効率を上げる。第2段階で、太陽光や風力など持続可能な自然エネルギーに依存した社会へ移行を目指す。炭素税や排出権売買など資本主義の原理にかなった政策も効果的だろう。
―経済発展をめざす発展途上国は、エネルギー消費抑制につながる排出削減に同意するだろうか。
経済開発には多くのエネルギーが必要だが、同時に地球温暖化の被害を最も受けるのも途上国だ。資金と技術の援助があれば、途上国は温暖化対策に乗ってくる。アジア・太平洋地域は温室効果ガスの排出量が急増している。地球温暖化を防げるかどうかはアジア次第、と言っても過言ではない。日本の果たすべき役割は大きい。
―12月の京都会議では具体的な二酸化炭素の削減目標を盛り込んだ議定書の採択が期待されるが。
「2010年までに二酸化炭素排出量を先進各国が一律に15%削減しよう」というEUの提案が議論の出発点として最もふさわしい。産油国の反対は当然として、アメリカや日本などEU案に反対している先進諸国の態度次第で、京都議定書は良くも悪くもなる。日本はリーダーシップを発揮し、将来に禍根を残さない議定書づくりに貢献する責任がある。
バート・ボリン氏 1988年のIPCC創設時から議長を務め、今年9月に退任予定。92年の地球サミットで気候変動枠組み条約の作成に貢献した。スウェーデンのストックホルム大名誉教授(気象学)。71歳。
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