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京都議定書採択 目立つ経済最優先 課題なお山積 希望と不満の声、交錯 実るか歴史的一歩 【解説】 地球温暖化防止に向け、二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの削減数値目標を盛り込んだ京都議定書は、これまで無制限だった化石燃料の使用に、初めてブレーキをかける。その意味で、一八世紀の産業革命以来続いてきた化石燃料文明の転換点を刻む、歴史に残る国際規約といえる。 京都議定書は、三年越しの難産の末の採択だった。一九九二年に気候変動枠組み条約が採択され、九五年の第一回締約国会議(ドイツ・ベルリン)で、温室効果ガス削減をも込んだ法的拘束力のある議定書が実現する予定だった。 ところが、排出削減に取り組むべき先進国間の利害対立が激しく、「第三回会議(京都)で採択を目指す」との合意にこぎつけるのがやっとだった。 京都での議定書採択を目指して設置された計八次の特別会合で議長を務めたのが、ラウル・エストラーダ議長(駐中国アルゼンチン大使)だった。京都会議全体委員会でも議長となり、ユーモアたっぷりに代表団を笑わせながら、議定書交渉の土壇場では、一部の国の異議を無視する強烈なリーダーシップを発揮し、京都議定書をまとめ上げた。 数々の抜け穴 しかし、生まれたての京都議定書は、まだまだ未熟だ。二〇一〇年ごろまでに、先進国平均で一九九〇年比五・二%減らす目標を決めたものの「実質的な排出削減を骨抜きにする様々な抜け穴ばかり目立つ」(気候フォーラムの浅岡美恵事務局長)内容になった。 そのひとつが、排出権取引。目標以上に排出削減を達成した国が、超過達成量を他国に転売できる制度だ。経済スランプで排出量が急減しているロシアは、〇%削減という緩やかな目標で、大量の排出権の所有国になりそうだ。 CO2、亜酸化窒素、メタンに加え、代替フロン三種も規制対象に加えられたが、他のガスと異なる「一九九五年比」を計算基準とした。環境団体は「数%の削減率を水増ししたのと同じこと」と批判する。さらに、科学的に正確な算出が困難な森林のCO2吸収効果も勘案することになった。 こうした数々の「抜け穴」を導入する動きは、日本、米国、欧州連合(EU)の三極の閣僚級折衝が始まった八日ごろから、急速に活発化した。 数字あわせに 科学論議を積み上げたはずの数値目標が「一晩に数回変わる」という激しい政治交渉は「削減率のインフレ」(外交筋)を引き起こす。〇%を主張していた米国は、日を追うごとに二%、五%、ついに七%と目標を上げ、二・五%案の日本も六%までつり上がった。一方、一五%を主張していたEUは「日米と差がある目標は認められない」と下方修正に応じ、最終的に半分近い八%まで下りた。 目まぐるしい数字合わせの背景には「吸収源や代替フロンの算入方法を少しいじるだけで、目標値が数%も変化する」(環境庁担当者)という事情がある。 「見かけの削減目標を高くして世間体を繕いつつ、一方で抜け穴を拡大し、自国経済への負担を軽減しようという意図が先進国に共通していた」。交渉を見守ったグリーンピースの松本泰子さんは指摘する。 そんな先進国の態度に、途上国が不信を抱くのも無理はない。「温暖化は、歴史的に大量の温室効果ガスを排出してきた先進国の責任。先進国がまず、真面目に排出削減をすべきだ」(インド交渉団員)との共通の思いが、百三十カ国以上の途上国グループを終始、結束させた。 米国上院が「途上国が議定書に参加しない限り、批准しない」と今年七月に決議したのを受け、米国は途上国に将来の排出抑制義務を負わせるシステムを議定書に盛り込もうと躍起になり、議定書交渉失敗の原因になりかねないと懸念されていた。 しかし、会議の終盤で、中国を中心に固く結束した途上国グループの激しい反発に遇い、断念せざるを得なかった。 ある外交官は「地球温暖化問題は、米国と中国という冷戦後の新しい対立軸の中心課題の一つになってきている。京都会議は象徴的だった」と語った。 京都会議では、自国経済の国際競争力を最優先する交渉態度から先進各国は抜けきれず、京都議定書は妥協の産物になった。会議後、環境保護団体のミーティングは、物足りなさと希望を表明する声が入り交じった。 「この一歩を大きく育てなければ」。世界は、数世紀に渡って被害が及ぶ地球温暖化を防ぐ第一歩を、やっと京都で踏み出したばかりだ。 (地球環境問題取材班 山内康敬)
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