| Kyoto Shimbun 1998.11.5 |
「役人って、どうして平気でうそをつけるんだろう」。九月中旬、大詰めを迎えていた地球温暖化対策推進法案の国会審議を振り返り、議員秘書の小林哲也さんはため息をついた。
参院国土環境委員会。地球温暖化防止ブエノスアイレス会議に向け、政府が条約事務局に送った提案について議員が質問したところ、環境庁幹部は「そんな提案はしていない」と答弁。ところが、まもなく日本提案を条約事務局がインタ―ネットで公開したため、怒った議員を真鍋賢二環境庁長官が訪ね、詫びるという異例の事態となった。
市民団体・気候フォーラムのスタッフとして昨年の京都会議にも参加した小林さんは「京都会議で環境庁は市民団体とも協調して頑張ったが、大事な情報を独り占めしようとする官僚体質から抜け切らない」と失望を隠さない。 十月二日、温暖化対策推進法がようやく成立し、国や都道府県、市町村に実行計画づくりが義務づけられた。気候ネットワ―クの浅岡美恵代表は「中身は不十分だが、成立にこぎつけたことを歓迎したい。京都議定書と同様、この一歩を今後、大きく育てることが大切」と指摘する。 ■米の妥協点探る 日本はようやく国内法を整備し、本格的な温暖化対策に乗り出した。だが、京都議定書をめぐる国際交渉では、先進国と途上国の対立が解けず、ブエノスアイレス会議の行方は混沌(とん)としている。 会議の最大の火種は、途上国問題だ。京都議定書は先進国だけに排出削減を義務づけたが、米国は「中国など途上国も排出削減に応じない限り、議定書に署名しない」とし、九月に東京で開かれた主要国の非公式閣僚会合でも、激しく反発する途上国側と折り合いがつかなかった。
九月に来日、京都で講演したインドネシア外務省顧問のアガス・サリさん(37)は「すべての人間が、エネルギーを使う権利を公平に持っている。我々はもっと豊かになる権利があり、先進国の削減が先だ」と、米国を厳しく批判した。 外務省の赤阪清隆審議官は「日本の立場は京都議定書の一日も早い発効。だが、米国抜きの議定書は意味がない。何らかの妥協点を見つけ、米国を納得させるしかない」と苦慮する。 ■技術提供で説得 米国が途上国説得の切り札とするのが「クリーン開発メカニズム(CDM)」の創設だ。途上国に温暖化対策の費用や技術を提供する見返りに、援助国は排出枠を獲得できる。途上国は資金を、先進国は排出枠を得るという一石二鳥のアイデアだ。米国は先月下旬、約二百五十億円の途上国向け温暖化対策予算を可決し、CDM導入へ向け先手を打った。 「CDMが自国に有利かどうか、大半の途上国は判断しかねているが、韓国やブラジルなどはCDM導入と自主的な排出削減目標を受け入れる可能性がある。そうなれば途上国側の結束は崩れ、交渉が一気に展開するかもしれない」。米国の環境シンクタンク、ワールドウォッチのセス・ダン研究員は分析する。 ブエノスアイレス会議で懸案の途上国問題をどう解決するのか。京都議定書の発効に向けて、京都会議ホスト国・日本のリーダーシップが問われている。
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