| Kyoto Shimbun 1998.12.1 |
アルゼンチンのブエノスアイレスで先月「地球温暖化防止会議(COP4)」が開かれた。昨年の京都会議で温室効果ガスの削減目標を定めた「京都議定書」の中身を詰めるための「行動計画」を採択した。会議場では環境保護団体より産業団体の姿が目立ち、各国の関心も環境からマネーへ移るなど、一年前と空気は一変していた。二十一世紀の地球環境を守る道筋は本当に見つかるのか。環境保全と経済成長のはざまで揺れる京都議定書交渉を、地球の裏側で追った。 (社会部 山内康敬)
初夏に向かう南半球の夜はすっかり明けきっていた。十一月十四日午前六時、十三日間に及んだ地球温暖化防止ブエノスアイレス会議は、予定を一日オーバーしてようやく閉幕の本会議にこぎつけた。
■小国締め出し 会議の焦点は、温室効果ガスの排出枠を国際売買できる「排出権取引」や途上国で排出削減につながる事業や投資を行った先進国企業に排出枠が与えられる「クリーン開発メカニズム(CDM)」など、京都議定書に盛り込まれた新制度を具体化する行動計画の採択だった。 交渉は難航の末、時間切れ寸前に日米や欧州連合(EU)、中国など主要十数カ国が密室に集い、行動計画の中身に合意、最後の本会議で全会一致で採択した。 しらけムードの本会議を一番盛り上げたのは、スイスの発言だった。「昨夜、多くの小国が交渉から締め出され、廊下で夜を過ごしました。交渉は透明で民主的であるべきです」。会場からは、共感の拍手が沸き起こった。
主要国だけの秘密協議を仕掛けたアルソガライ議長(アルゼンチン環境相)は、会議後の記者会見で「交渉をまとめるにはやむを得なかった」と弁解した。 行動計画づくりがそれほど難航した原因は、先進国と途上国の鋭い利害対立だった。 排出枠の国際売買をビジネスチャンスとみる米国が、排出権取引の早期具体化を求めたのに対し、途上国側は「実質的な排出削減につながらない」と行動計画づくりの先延ばしを図り、議論は平行線をたどった。 「経済成長第一の中国やインドには、交渉が前に進むほど、自分たちにも排出抑制義務を課される時期が近づく、という警戒感がある」。国立環境研究所の川島康子研究員は遅延戦術の背景を説明する。 それだけに、開催国アルゼンチンのメネム大統領が、途上国として初めて、自主的に排出抑制に取り組むと表明したことは、中印両国の神経を逆なでした。「グループへの裏切り、とは呼びたくないが」。インドネシアの代表団員は苦渋の色を浮かべた。 さらに、カザフスタンも同様の発表。会議場では「ベネズエラ、モンゴル、ナウルも排出抑制するらしい」とのうわさが飛び交い、疑心暗鬼に陥った途上国グループは一時、分裂状態となった。 ■問題先送りも 「資金がほしいアフリカ諸国や、米国と経済的きずなが強いラテンアメリカ諸国も揺れている」。日本の外交官が耳打ちした。CDMを通じた資金供与をちらつかせて途上国グループを分断、交渉を有利に運ぼうとする日米グループの作戦勝ちだった。 「途上国の参加がない限り、議定書に署名しない」としていた米国は、メネム演説の後、すかさず京都議定書に署名。アイゼンシュタット米国務次官は「アルゼンチンの発表だけで、この会議は成功だ」と会心の笑みを浮かべた。 最終日の夜、主要国だけの徹夜交渉で合意した行動計画は、京都議定書に盛り込まれた新制度を二〇〇〇年をめざして具体化するとした。一方、途上国の排出抑制問題は中国・インドなどの抵抗で先送りされた。だが、米国に近いカナダの代表員は「中国は、そう長くだだっ子ではいられはない。アルゼンチンに続く途上国が増えれば(排出抑制を)やらざるを得なくなる」と予測する。
会議を見届けた韓国のベテラン官僚は嘆いた。「豊かな国も貧しい国も、結局は国益ばかり。一体何のための京都議定書なのか」。
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