Kyoto Shimbun 1998.6.26
よみがえれ 環境 第10部
(下)

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「文明のあり方」変える必要

   経済学者  佐和 隆光さん

 人類はかつてない豊かさを享受している。しかし、二十一世紀を目前に控え、地球環境問題は、現在の社会システムや価値観の全面的な見直しを私たちに迫っている。

 人類の四分の三を占める途上国の貧しい人びとが日本人並みの生活を始めれば、地球環境は破局を迎える。しかし、豊かなわれわれが「経済発展をするな」とは言えない。このジレンマを克服するには、文明のあり方を変えねばならない。

 石油に支えられた「大量生産・大量消費・大量廃棄」を特徴とする工業文明から、省エネやリサイクルを徹底する代謝循環(メタボリズム)文明へ、転換を急がねばならない。昨年十二月の地球温暖化防止京都会議では、エネルギー消費を抑制する京都議定書が採択され、文明の一つの転換点が刻まれた。

 〈環境問題について舌鋒(ぜっぽう)鋭い論客として知られる。現在> は京都大経済研究所所長。中央環境審議会委員、京都21会議座長など、将来社会のあり方を検討するさまざまな要職を務める〉

世界遺産・白神山地の深い森と豊かな水。地球環境の保全は私たち一人一人の行動にかかっている(秋田県)
 ■際立って低い関心

 日本では環境に対する国民の関心が、先進国の中で際立って低い。理由は二つある。国民の豊かさと教育の水準だ。

 一人当たり国民総生産(GNP)で日本は世界のトップにある。しかし、長時間労働や狭い住宅、受験戦争など、生活の質は低い。本当の「豊かさ」を実現してこそ、環境を真剣に顧みる余裕が生まれる。

 教育レベルも高くない。大学進学率は先進国でも上位だが、受験知識の詰め込み教育に過ぎない。個性と主体性を重視した教育で、環境や社会問題に熱心なミドルクラス(中産階級)を育てるべきだ。

 〈環境規制は企業活動を制約し、生産コストを引き上げ、経済成長を妨げるという論者もいる。環境保全と不況克服を両立させる妙案はあるのだろうか〉

 バブルのころ、高級車を乗り回し、グルメに走る−というぜいたくなライフスタイルがもてはやされた。質素倹約を重んじ、カネへの執着をよしとしない伝統的な美徳はすたれ、拝金主義がはびこった。

 最近、消費の落ち込みが不況の元凶としてやり玉に上がるが、バブル期の消費ブームこそ異常だった。不況もあって、消費者が再び質素・倹表示中止:B, 表示継続:リターンキー> 約を志向し始めたのは、大量廃棄社会を見直す意味からも喜ばしい。

 企業は、環境問題をビジネスチャンスと受け止めてほしい。環境技術が企業に利益をもたらす時代がくる。超低燃費車や太陽光パネル、省エネ型家電などを作ることが得意な日本のメーカーにとって、環境ブームは追い風だ。

 〈地球環境の悪化について、一人一人の消費者も責任がある。消費者には何が求められ、どう行動すべきなのか〉

 地球環境問題は「ちりも積もれば山となる」という格言の典型。車の排ガスで温暖化、家庭排水で水質汚染…といった具合に。一人一人の消費行動が変わらないと、地球は守れない。

 ■環境大国へ脱皮を

 消費の変化を促すため、環境にやさしい税制改革を提唱したい。まず、石油や石炭に課税する「炭素税」を早急に導入すべきだ。試算では、ガソリン一リットル当たり二円の税で、年一兆円の税収が見込める。それを温暖化防止のための技術開発や太陽パネルの普及に活用すれば、大幅な温室効果ガスの削減につながる。レシートの「炭素税」の欄を見るだけでも、消費者の環境意識は高まる。

 地球環境問題は二十一世紀、人類にとって差し迫った課題だ。「今まで通りで、何とかなる」という発想では、この危機は乗り越えられない。今こそ日本は「経済大国」から「環境大国」へ脱皮を図り、率先して地球環境問題に挑戦するリーダーシップを国際社会で発揮すべきだ。

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 連載「よみがえれ環境」シリーズは今回で終わります。



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