Kyoto Shimbun 1997.4.18

よみがえれ環境 第2部
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エコマテリアル

石油には頼れない

 紙コップの中で液体をかくはんして間もなく、きめ細かな茶色の泡がモコモコとあふれてくる。「すぐ固まりますよ」。京都大大学院農学研究科(京都市左京区)の実験室で、白石信夫教授(複合材料化学)は、軽目焼きのような発泡材を作ってみせた。石油から作った発泡スチロールとは違い、自然界の微生物の力で分解する生分解性プラスチックの新顔だ。

木材からできる新素材の生分解性プラスチックは微生物によって分解する(京都市左京区、京都大大学院農学研究科)
 白石教授は、木材を原料とする生分解性プラスチックの開発研究に取り組んでいる。「不可能」という従来の常識を覆し、木材をフェノールなどの溶剤に溶かした「液化木材」を使って、おわん、トレーなどの成形物を作ったり発泡させることに成功した。

 「日本で廃棄されている端材の量は、石油から作られるプラスティックなど合成高分子の量とほぼ同じ。端材を使えば、新たに森林を伐採する必要もない」と白石教授はいう。

 ■再生しやすい素材

 製造段階から廃棄まで環境への負担が少なく、しかもリサイクルしやすい素材の「エコマテリアル」(環境調和型材料)が環境問題の浮上とともに注目を集めている。分解しやすいプラスチック、リサイクルできる金属、再生可能なコンクリートなどがあり、科学技術庁は93年度から5カ年間計画で産官学の「エコマテリアル開発プロジェクト」をスタートさせ、開発に取り組んでいる。

 同プロジェクトを推進する原田幸明・科技庁金属材料技術研究所エコマテリアル研究チーム主任は「このままだと資源は枯渇するので、リサイクルできない材料は使えなくなる。21世紀は、エコマテリアルの時代」と意気込む。

 素材の中で最も関心を集めているのが、生分解性プラスチックだ。再生可能な植物資源を利用し、廃棄物は土に返して無限に循環させる。燃やしたり、熱を加えて変化させるよりも、エネルギーの損失が少なく、有害物質や二酸化炭素を発生させることもない。

 3年後の2000年にすべてのプラスティック容器の回収を義務づける容器包装リサイクル法の成立(今月1日施行)も呼び水となり、産業界も生分解性プラスチックの技術開発に本腰を入れ出した。

 島津製作所(京都市)はトウモロコシを原料にする生分解性プラスチックのポリ乳酸を開発。今年から大津市の工場で、本格的に生活用品のケース用のポリ乳酸の生産に入る。すでに、ボトル容器、農業用シート、植栽シート、Tシャツなども試作。塩見紘一・化成品部長は「製品に使いたいという引き合いが増えている」という。

 ■穀物メジャー時代

 生分解性プラスティックの開発と現状に詳しい望月政嗣・ユニチカ技術開発本部主管も「生産量が増えれば、価格は下がる。石油は長期的には枯渇しつつあり、価格は上がるので、コスト的には植物から作った方が安くなる。21世紀は石油メジャーではなく、穀物メジャーの時代かもしれない」と語る。

 プラスチックは現在、国内で年間1,200万トンが生産され、600万トンは廃棄物となっている。通産省の研究会は「このうち半分の300万トンが将来的には生分解性プラスチィックになる」と試算。すで米国では、穀物メジャーが生分解性プラスティックのプラント建設に乗り出しているという。

 「石油にはもう依存できない。木や農産物が主役となる時代が必ず来る」と白石教授。森や畑が油田に取って代わるのも夢物語ではなくなってきた。


                
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