よみがえれ
環境第3部
中国四川省の重工業都市・重慶市にある市環境科学研究所は、酸性雨で屋上の鉄柵が赤茶色にさびついてぼろぼろに腐食。郊外の景勝地の南山公園では一九九〇年以降、一千ヘクタールを超える松林が次々と枯死した。 「酸性雨の影響で、松林が一面に枯れてしまった。かつてヨーロッパで起きたことが中国で起きている」。松林を調査した黄美元・国家科学院大気物理研究所教授は指摘する。 中国は「改革・開放」政策で、実質GDP(国内総生産)の伸びが前年比一〇%強の著しい経済成長を続けている。九六年からの第九次五カ年計画では、内陸部の経済発展に力を入れ、積極的に外国資本を導入。重慶市では、今年一―六月に百五十社の合弁企業が進出し、合弁企業は計二千百社に増えた。 ■大気汚染が深刻化 しかし、経済成長に伴って、エネルギー源の七四%を石炭に依存する中国は、石炭の燃焼で出る二酸化硫黄(SO2)、二酸化炭素(CO2)などの大気汚染が深刻さを増している。 昨年は全国八十四カ所の観測地点の半数で酸性雨が観測され、湖南省長沙市でpH3・5、貴州省貴陽市ではpH4・5―5・1を記録。貴陽市のSO2濃度は年平均で一立方メートル当たり〇・三七四ミリグラムに達し、国基準の六倍を超えた。 CO2も、中国は米国に次ぐ世界第二の排出国だ。排出量は九〇年代以降、経済成長率と同じペースで増え続け、九四年に日本の三倍の八億二千八百万トン(炭素換算)に達した。 このため、酸性雨などの被害拡大を危ぐする重慶市は、八九年から約三百カ所の公害企業を閉鎖。電子機器メーカーなど環境汚染の少ない工場を優先的に誘致するとともに、日本や欧米の技術を導入し、環境対策に本腰を入れ出した。 「中国は六〇年代の日本の経済発展の段階と同じ状況で、環境対策を急ぐ必要がある。工場を造らない地域を定めたり、石炭の使用に応じて課税する対策もとっている」。重慶市環境保護局の趙緒雲・弁公室副室長はいう。 九二年に開設された市東部の華能国際電力開発会社・珞オウ火力発電所は、建設費の一二%の資金を充てて三菱重工の最新式の脱硫装置を導入。SO2除去率は九五%を超え、年間十万トンのSO2排出を五千トン以下に抑えた。鄭正華工場長は「工場に脱硫装置は欠かせないが、外国技術は高過ぎる。中国の実情に合った安価な技術を開発したい」と意気込み、子会社で独自の脱硫装置を開発中だ。 ■途上国規制を警戒 環境汚染への危機感とは別に、地球温暖化に関する国際交渉では、中国は「地球温暖化はCO2だけではなく、太陽活動など多くの要因がある。エネルギー消費の規制だけを求めるのは一面的」(魏復盛・環境観測総局副局長)と、途上国への経済活動規制の動きを強く警戒する。 昨年七月、ジュネーブで開かれた気候変動枠組み条約の第二回締約国会議で、中国外務省の李肇星次官は「温室効果ガスの多くを排出してきた先進国がまず温室効果ガスの抑制・削減についての約束を果たし、途上国への資金的・技術的支援を行うべきだ」と、途上国の考えを代弁し、先進国の責任を強調した。今月二十三日、ニューヨークの国連環境開発特別総会でも、中国代表は先進国の責任を繰り返した。 「中国の基本的な姿勢は『悔いのない政策』だ。環境と同時に、経済と社会にも利益をもたらすような形で、温室効果ガスを軽減すべきだ」。張瑛・中国国立気候センター助教授は今年三月、京都市内で開かれたNGO国際会議で、環境と経済の両立を図ろうとする立場に言及した。 中国の沿岸では、この百年間に海面が十四センチ上昇したとの報告もある。じわじわと地球温暖化への危機感が強まる一方で、経済成長も優先したい途上国のジレンマが見え隠れする。
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