よみがえれ
環境 第4部
今年6月の住民投票で投票者の約八割が産業廃棄物処理場の建設計画に反対した岐阜県御嵩町。建設予定地の小和沢地区は町中心部から車で約30分。清浄な伏流水が木曽川に注ぐ静かな谷あいにある。 「下流域500万人の飲み水の源流に、産業廃棄物を埋め立てる計画が、ほとんどだれにも相談なく進められていた」。同処理場建設に反対する古川雄一さん(50)は振り返る。 1995年七月の町長選で、産廃処理場の反対を訴えた柳川善郎町長が現職を破って当選。柳川町長は昨年2月以降、予定地近くの水源の安全性、地域適性の検討結果などについて県に質問書を出し、県の回答を広報紙やインターネットなどで公開。町民の反対運動が勢いづいた。 「県の回答を読めば読むほど、不安になった住民が多い」と古川さん。
この間、暴漢の柳川町長襲撃事件や、町長宅の電話盗聴、「振興協力金」35億円を支払う業者の約束で町の方針が賛成に変わったことなど、不透明な事実が次々と明るみになった。柳川町長は「(予定地の)町有地を業者に貸したり売ったりしない」と表明、建設計画は事実上、凍結状態になった。 「自然環境や住民の健康を守るためには『情報公開と住民参加』という車の両輪が欠かせない。御嵩町のケースがそのことを教えている」。アマミノクロウサギやムツゴロウを守る住民訴訟にかかわった篭橋隆明弁護士(名古屋弁護士会)は指摘する。 「地球温暖化問題での日本政府の態度も、環境庁や通産省などが密室で二酸化炭素(CO2)削減目標を決めようとしているように、オープンな議論をしようという態度になっていない。問題の根っこは御嵩町の産廃問題と同じだ」ともいう。 12月の地球温暖化防止京都会議に向けて、日本政府はCO2など温室効果ガスの削減目標づくりを迫られているが、外務省、環境庁、通産省の意見の隔たりが大きく、CO2削減の数値目標の設定はずるずると先延ばしされている。 NGO「環境行政改革フォーラム」の青山貞一代表は「政府内でCO2削減について、どんな議論がされているのか、国民に全く見えない。そればかりか、各省庁が自分の立場を有利にしようと、自分たちに都合の良い団体や学者の情報ばかり流し、国民不在の情報戦になっている」と、省庁の態度を批判する。 ■市民活動の飛躍台 米国で、連邦情報自由法が制定され、省庁が発表する各種のレポートや資料がインターネットなどで簡単に入手できるのとは異なり、日本では昨年末、行政改革委員会が「情報公開法」の早期制定を求める意見書を橋本竜太郎首相に提出した段階だ。市民団体も、他の先進国のように行政に圧力をかけるほどの力量は持っていない。 京都会議に向けて結成した環境NGO「気候フォーラム」は今年三月、世界のNGO代表を招いて国際シンポジウムを開いたが、法人格がないため、メンバーが個人的に保証人になり、招待者のビザ発給にこぎつけた。国内の多くの市民団体は法人格のない任意団体にとどまっている。 環境保全、国際協力など公共利益のために活動する市民団体に法人格を与える市民活動促進法(NPO法)が、ようやく今秋の臨時国会で成立する可能性が出てきた。
気候フォーラム事務局長の浅岡美恵弁護士は「京都会議に向けた取り組みは、日本の市民活動が大きく飛躍するチャンス。市民と行政の力関係を変えたい」と意気込んでいる。 (第4部 おわり)
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