よみがえれ環境 第1部
■いつのまにか激減 昔、田畑の耕作用に肥(こえ)をためた野つぼに、京都大大学院人間・環境学研究科の松井正文助教授(動物自然史)が入り、底にたまった落ち葉をかきわけ、体長10センチほどの小さな生き物を見つけた。「いた、いた。まだ、いてくれましたよ」。京都市内で絶滅が心配されて久しいカスミサンショウウオ。京都ではここが最後の生息地かもしれないという。 カエルやサンショウウオなど身近な生き物がなかなか姿を見せなくなった。環境庁の自然環境保全基礎調査(緑の国政調査)で両生類・は虫類の分布をまとめている上野俊一・国立科学博物館名誉研究員は「カエルはどこにでもいて調査する必要がなかったのに、いつのまにか消えてしまった。なぜ、これほど減るのか、よく分からない」とため息をつく。 カエルは1960年代に大量の農薬を使用した影響で一時的に減ったが、70年代には増えていた。ところが、80年代半ばを境に、再び減り出し、西日本のカスミサンショウウオ、九州のオオイタサンショウウオ、本州のダルマガエル、アカガエルなどが姿を消した。アマガエル、ウシガエルなど数種類を除けば、もはやカエルのハーモニーは聞かれなくなった。 カエルの生息地域は南極、北極圏以外のほぼ全世界に分布しているが、世界各地からも「カエルが消えた」と報告がされている。国際自然保護連合(IUCN)は94年のレッドリストに「絶滅」4種「絶滅にひんしている」24種「危険な状態」26種―のカエルを挙げた。 北海道にはいなかったトノサマガエルやツチガエルが住みつくようになる分布の異変も起きている。「水と土と森」がなければ生きられない両生類は、自然の豊かさを測る指標になる。その両生類に何が起きているのか。 米国では94年、「オゾン層の破壊による紫外線の増加で、カエルの卵の遺伝子が破壊されている」と報告された。酸性雨や水質汚濁を原因と指摘する研究者もいる。 ■開発が追いやった 両生類の研究で知られる松井さんは「もしかしたら地球温暖化の影響もあるかもしれない。でも、オゾン層の破壊や地球温暖化というばく然としたことより、開発など、人間による環境の変化で、カエルやサンショウウオを追いやっているのは確実」と指摘する。 冬でもわき水がしみ出る水辺があり、両生類の京都市内の最後の楽園とみられた桃山丘陵の休耕田にも、外来種のセイタカアワダチソウが生え、土地が乾燥し始めた。シュレーゲルアオガエルが生息していた丘陵一角の湿地は、伏見区深草総合庁舎の建設に伴って埋め立てられた。 「カエルやサンショウウウオは森や湿地に隠れて目立たないから、いなくなっても多くの人が気づかない。しかし、カエルがいなくなれば、それを餌とするヘビや鳥がいなくなる。いったん変わった生態系は元に戻らない」と松井さん。 カエルの歌が消えようとしている。
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