Kyoto Shimbun 1998.3.18

よみがえれ環境 第7部
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 意識改革

 無駄のない「町家」に光

 薪(まき)ストーブがパチパチと音を立てる。京都市右京区の小倉山のふもとで半自給自足の生活を営む元商社マン森孝之さん(59)は、ストーブに手をかざしながら「現代社会は人間の卑しさを助長し、人々は消費という麻薬中毒にかかっている」と語る。

エコロジカルな暮らしの知恵が息づく京の町家が、再び注目を集めている(京都市中京区新町通錦上ル)
 戦時疎開で西宮市から移り住み、大手商社(大阪市)に勤めながら30アールの農地を守り続けた。冷暖房のエネルギー消費を抑えるため、自宅は半地下構造で、屋根には太陽光パネル。生ゴミを腐らせた堆肥で野菜を育て、煙突の余熱で書斎を暖める。

 青春時代に結核を患い、死に直面した体験が、地球にやさしい暮らしを始めるきっかけだった。

「健康な生活がしたい、というのがスタートだった。人間は高貴にも、卑しくもなれる。でも、死を意識したとき、より高いものを求める。ちょうど死刑囚やがん患者がそうであるように。妻が言いました。人間はいつか死ぬ、死刑囚みたいなもの。だから、自分自身を見つめ直せば、だれもが変われるはず、と」。

 ■CO2半分は家庭から

 世界の科学者でつくる「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)は1995年に「気温の上昇を1度までに抑えるためには、世界の二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出量を、2050年ごろまでに現在の半分にする必要がある」と報告した。京都議定書で決まった「日本6%、先進国平均5.2%」の排出削減は「ほんの一里塚に過ぎない」(環境団体グリーンピース・ジャパン)。

 日本では、CO2の半分は冷暖房、電化製品、マイカーなど家庭生活に関係して発生する。温暖化防止にはライフスタイルの大幅な見直しが避けられない。

 環境庁の外郭団体が設置した「21世紀の地球環境と人間社会を考える研究会」は、1月に発表した報告書で、地球を人体に見立て、バイ菌やがん細胞のように生態系を壊してきた人間活動を、乳酸菌やビフィズス菌のように共存共栄的に変える「環境革命」の必要性を説いた。

 環境革命後、私たちの暮らしは、どんな姿に変わるのだろうか。「環境保全のためにモノの生産量や消費量が減る半面、多彩なサービスを売るベンチャー・ビジネスが盛んになり、経済はむしろ活気づく」と、同志社大の郡嶌孝教授(環境経済)は予想する。

 環境保全のために、省資源化や廃棄物処理の徹底がメーカーに義務づけられると、自動車を作って売るだけの会社は成り立たなくなり、車を製造し貸し出して回収する会社に変身を迫られる。郡嶌教授は「リサイクルや省エネ、ゴミの減量は当たり前の社会になる。町家に代表される、京都らしいムダを省いた暮らしの良さが、再び見直されるだろう」と指摘する。

 ■使い捨てに浸らず

 伝統的な京の町家は通風や採光に配慮した構造をとり、多くの住人は夏と冬で建具を使い分けたり、季節の露地野菜を買うなど、暮らしのなかで省エネ・省資源を実践してきた。京町家再生研究会の望月秀祐代表は「ぜん息やアトピーの対策として、通風性の良い町家を参考にしようと、住宅会社による町家の見学も相次いでいる」という。

 京都市中京区の呉服問屋街で、100年前の町家に住む主婦小島冨佐江さん(40)は「町家の住人にとって『もったいない』『始末しよ』という暮らし方は当たり前。モノを捨てずに取っておく習慣もあり、使い捨て文化に浸りきっていないところがある」と話した。

 「物質的な欲望の追求から心の豊かさへ、環境革命には人々の価値観の転換が欠かせない。意識改革を呼び起こすには、エコ技術の開発や政策づくり、環境教育などがカギになる」。IPCC報告書の執筆者の一人を務めた天野明弘・関西学院大教授(経済政策)は指摘している。

第7部 おわり


                
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