Kyoto Shimbun 1998.6.17【京都経済 再生】
 第2部 転機の着物 <3> 自立

 独自路線で活路探る
 新たな販売戦略検討

 「ここまで仕事が減ってしまっては…。職人同士が結束して自ら仕事を見つけ出すしかない」。

 京友禅のなかでも高級呉服といわれる手描(が)き友禅染職人らの5つの同業者組合でつくる「京都手描友禅染連合会」(林実理事長)は三月末、これまで加盟していた京都染色協同組合連合会(京染連、関谷泰三理事長)を脱けた。

 「手描きの創作性や高級感を売り物にした直接販売にも取り組んでみたい」(林理事長)。昨秋、手描き友禅染連合会を法人化したのを機に、独自路線を歩む決意をしたためだった。

消費者の求める着物とは…。産地のあり方
が今、問われている(京都市上京区の友禅
染工場)               

 直接商品化へ

 京染連は一九七六年、国の伝統的工芸品の指定を受けた「京友禅」の産地窓口として誕生した。京友禅の主要二十一組合が結集していたが、今は十三組合まで減った。

 背景には、和装需要の衰退がある。全国の染め呉服の九割近くを占める京友禅の生産量は、七一年のピーク時から、昨年は約十分の一の百七十六万反に減少した。今も毎年、前年比で一割以上の減産が続いている。

 京染連も「手をこまねいてはいられない」と、今秋をめどに新商品や販路づくりを含めた将来ビジョン策定を急いでいる。細川興賢専務理事は「通信販売などの新たな販売チャンネルも検討していきたい」と話す。長年、室町から委託加工を請け負ってきた友禅業界が、生き残りへ模索を始めた。

 着物の地色を染める業者らの京都引染工業協同組合(松村智史理事長)は昨年、オリジナルの男性用染め着物の商品化に着手した。今秋には、着物と帯、羽織の仕立て上がりで十万円という破格の値段で売り出す予定で、すでに近畿や首都圏の百貨店から引き合いがきている、という。

 「流通コストを省くだけでなく、消費者の好みをストレートに、もの作りに生かすことができる」。同組合の井上紀誉一副理事長は、直接、商品化に乗り出した意義を、そう語る。

近年の友禅染・西陣帯生産量
 京友禅生産のピークは71年の1652万反、西陣織帯は67年の828万本。その後、生産数量は一貫して減少傾向だが、販売金額ではバブル期が突出。数量の落ち込みを補う着物の高級化・高額化が、景気変動の影響を一層受けやすくしている。
 資金力も重要

 友禅業者の大半は個人や零細企業。問屋抜きで自ら在庫負担を抱えるのは、危険な賭けになりかねない。工程の単純な男物に比べて、色柄が重要な商品価値を持つ女性物は、完成品になるまでに、分業化された十数工程が必要。それだけに、独自の企画力、デザイン力に加えて、資金力が求められる。

 五年前、染加工業者ら五社で作った小売り直結の呉服メーカー「紅きらら」社長でもある井上副理事長は「小資本のために一気に普及はできないが、メーカー自ら責任を持ったブランドを確立していくことが重要だろう」と話す。

 西陣織工業組合も昨秋、ジェイアール京都伊勢丹(京都市下京区)と西陣織製品の新ブランド「絹織千年」を共同開発した。また、インターネットで消費者との接点づくりを目指す織りや染めなどの業者の動きも目立ってきている。

 渡辺隆夫・西陣織工組理事長は「個々の業者が生き残っていくためには、今後、産地直販をやらざるを得ないだろう。いろんな販路を持って、最終的には消費者に選択してもらえばよい」と強調する。

 和装産地は、室町問屋の企画、資本のもと、細分化された工程分野に専念し、その影響下に置かれてきた。この産地に今、「自立」という新たな挑戦の動きが芽吹いている。


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