Kyoto Shimbun 1998.9.8【京都経済 再生】
大競争時代のインフラ 「情報化の遅れが、仕事を失いかねない」。京都市南区の電機メーカー・京都電器はそんな危機感を背景に、コンピューターネットワークの再構築を進めてきた。それがこの九月、ようやく始動する。 システムづくりに取り組む春名洋海管理課長は、一年前の苦い経験が忘れられない。「得意先がわが社だけと取り引きしていた製品を、他社とも取り引きしようとした」。
得意先の大手メーカーは、データ通信を使って設計図面の調整、やりとりを目指していた。当時、同社はネットワークの再構築中で、取引先の意向に沿える態勢ではなかった。「わが社のネットワークづくりが不十分だったことが、原因だった」。 パソコンが拍車 企業が情報技術(IT=インフォメーション・テクノロジー)で武装し始めたのは、九〇年代初めから。小型で低価格のパソコンの普及が、この動きに拍車をかけた。 ワコールの量販店向け商品を扱うウイングブランド事業本部(京都市伏見区)は、販売先のスーパーと配送センターを専用線で結び、受発注をコンピューター同士で行う「電子テータ交換」を拡大させてきた。 3年前にジャスコとの間でスタートし当初の八店から昨年八月には約一八〇店に増えた。原田哲夫・同事業本部経理総務グループ長は「一回の受注に最高一千枚の納品伝票が必要だったのが、ゼロになった」と、情報化の効果を強調し、「将来は店頭と工場をネットワーク化してムダなく生産できる体制を目指す」という。 不可欠な投資 情報化は、生産や物流現場だけでなく、ホワイトカラーの職場も大きく変容させている。 竹菱電機は今年四月、新たに電子決済システムを導入した。交通費や接待費などの経費をネットワーク上で行い、支払いは銀行口座へ。データはそのまま財務会計に利用し再入力の労力を省き、日々の予算管理や収益分析に活用している。 データは画面で公開され、出張旅費の日時や金額などの明細が瞬時に表れる。「裏金づくりはできませんよ」。担当の堀井安彦常務は冗談まじりに笑う。 オムロンは、京都企業の中で、最も先進的に情報化に取り組んできた。国内外約二〇〇拠点をネットワークで結び、約一万二千台の一大コンピューター網を構築している。吉田進情報化推進センター長は、企業の情報化投資を「ハードや人件費も含めて、平均売上高の1−2%。オムロングループろら七、八〇億円前後」と試算したうえで「投資は、大競争時代を生き抜くグローバル企業にとって必要不可欠なインフラ」と位置づける。 国内外の拠点 「京都一の高層というだけでなく、国内外55事業所の情報拠点でもある」。八月五日、京都市伏見区に完成した京セラ新本社ビルを指して、伊藤謙介社長は満足げに話した。ビルには、一秒間にフロッピーディスク八〇数枚分の情報量を送信する「一ギガビット」の超高速の光ファイバー回線と、ネットワークを配線工事なしで組み換えられる最新のバーチャルLAN(仮想的構内通信網)を導入している。 「巨大ネットワークによるマルチメディア時代の到来に備えて京セラ独自の業務単位組織『アメーバー』が自在に活躍できる環境にするための情報化投資」(経営管理本部)と説明する。 企業が二十一世紀を生き抜くためには、IT武装が欠かせない時代を迎えた。
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