Kyoto Shimbun 1999.2.3 【京都経済 再生】
 第5部 ものづくりの挑戦 <3>  産学協同

 活性化へ成果移転
 問われる学都の真価

 染色技術の応用で新製品開発に取り組む「ニシザキ」(京都市下京区)の西崎照一社長は1月27日、京都市左京区の建築研究協会で、はやる思いを抑えながら、西本孝一京都大名誉教授(日本木材保存協会長)の返事を待った。独自開発したシリコン系はっ水剤の品質テストの結果が届く予定になっていた。待ち望んだ西本教授の答えは、製品化へのゴーサインだった。

 はっ水剤の開発は、昨年1月から取り組んだ。木材に塗ると、防腐効果をもたらすこのはっ水剤は、防虫作用も併せ持つ。安全性を保ちつつ防虫効果が確保できるかどうかが、製品化に残された最後の課題だった。

産学連携は新産業の創造、 新技術の開発へ期待が大きい (京都工繊大)
 呉服の染色加工業として100年の歴史を持つ同社が、「産学協同」の研究開発型企業として脚光を浴びたのは、1980年に開発した色落ち、色焼けしない「堅牢(けんろう)染め」がきっかけだった。京都市染織試験場の研究員の仲介で始めた同志社女子大との共同研究の成果だった。以来、京都の大学教授らとの共同研究に取り組み、染色技術を応用した製品を次々に開発してきた。

 「ものづくりで生き残るには、伝統の技術だけでは難しい。大学の研究者の知識、技術で新しい血を吹き込まなければ」。西崎社長は、大学との連携に中小企業の生き残りをかける。

 拠点整備も急

 京都には、40近い大学が集積し、企業経営者と大学の研究者のネットワークを構築してきた。それが京都企業の強みを生んできた、と言われている。

 米国は80年代、大学からの技術移転を成功させ、数多くの新産業を創出した。時を経ずして、日本でも「大学の研究資源を社会に還元すべきだ」という気運が高まった。

 国立大では87年度から地域企業の共同研究拠点となる「地域共同センター」の設置が始まり、98年度までに全国の約50大学にセンターが整備された。理工系学部を持つ私立大でも産学連携システムの構築が急速に広がっている。

 90年に誕生した京都工芸繊維大地域共同研究センターのセンター長黒川隆夫教授は、大阪大の助手だった79年からワコールとの共同研究に取り組み、コンピューターを活用した人体のシルエット分析方法の開発を担ってきた経験を持つ。「大学は、産業界との連携を深めるだけでなく、研究成果を新製品や新技術の開発にどう結びつけ、どう企業の活性化に役立てるかまで問われるようになってきた」と言い切る。

 特許料を還元

 昨年8月の「大学等技術移転促進法」施行は、大学の研究成果の産業界への移転を一層押し進める法律として注目を集めた。同法施行を受け、大学と産業界の橋渡しとなる「技術移転機関(TLO)」設立の動きが各地で始まっている。

 昨年10月、京都リサーチパーク(下京区)と立命館、京都大教員有志が出資して「関西TLO株式会社」(下京区、社長・大野豊京都大名誉教授)を設立した。大学の研究成果を権利化した上で企業にあっせんし、特許料を研究費に還元する「知的創造サイクル」づくりを狙う。

 同社は現在、大学研究者や企業を対象に「技術情報クラブ」の会員集めを進めている。中村卓爾専務は「98年度中に事業の核となる研究成果、技術などの権利化を進め、企業への移転に向けた準備を整えたい」と意気込む。

 不況が深刻化し、閉塞感が強まる中で、産学協同への期待は高い。地域で芽生えた企業と大学連携の動きをどう育て、地域経済再生に結びつけるのか。学術研究都市・京都の真価が問われている。


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