The Kyoto Shimbun

町家を生かし新事業

庵(いおり)京都市下京区富小路通高辻上ル

 春の観光シーズン真っただ中。四条河原町まで徒歩5−10分程度という市内中心部の京町家から観光に繰り出し夜に戻ってくる−。そんな観光客の姿が徐々に増えている。「暮らすように旅する」をコンセプトに企画会社の庵(いおり)が始めた京町家ステイ事業は、折からの京都・町家ブームの追い風も受け、人気が高まっている。

 京町家を丸ごと一軒貸す事業で、元豆問屋の店舗兼住宅や鴨川沿いの町家など、明治−昭和初期に建てられた6軒で展開。管理人はおらず、食事も出ないが、宿泊者は気ままに京都暮らしを体験できる。「昔ながらの京町家に泊まれば、京都観光の余韻も格別なものになる」と梶浦秀樹社長(50)は観光客の思いを代弁。自身も江戸っ子で京町家に「あこがれの日本」をイメージするからだ。

 しかし、戦前に建てられた古い京町家で宿泊事業を行うには法律の壁が立ちはだかった。宿泊施設にするには消防法や建築基準法に基づいた大規模な改修が必要で、建物の現状をとどめられなくなるため、「宿泊施設」ではなく「民家」を賃貸する形式を採った。

 ただ、民家を所有者以外の仲介者が貸し出すには宅地建物取引業法(宅建業法)に基づく免許が必要。苦肉の策として、町家の所有者から庵が物件を借り、宿泊客にまた貸しする「宅建業法の想定外」の手段で、事業実現にこぎつけた。

 本格展開を始めた2005年度の稼働率は約20%、06年度も約30%と低迷。宅建業法上、旅行会社を経由して販売できず販路が限られた影響が大きかったという。団塊世代の大量退職や体験学習観光へのシフトから、町家などを生かした長期滞在型観光のニーズは拡大が見込まれているが「現在の法律では限界がある」と梶浦社長。  


京都人になった気分で宿泊できる京町家(京都市下京区・筋屋町町家)
 一方、「観光立国」を目指す国土交通省も町家などの伝統的な生活空間を観光に生かすには「法律上の整理が必要」(同省観光事業課)と、今年2月から3月にかけ庵やジェーティービー首都圏を主体とするモデル事業を実施した。所有者から庵が借りた町家を、宿泊希望者があった場合、ジェーティービー首都圏が庵から借りて客にまた貸しするという複雑な仕組みだが、旅行会社の販路を生かし期間中の稼働率は50%を超えた。週末には予約が集中し10組以上断ったといい、ニーズの高さが証明され、08年度は黒字化を見込む。

 京都市内の町家は、京都市景観・まちづくりセンターによれば、03年の調査時では1998年比13%減の約2万4000軒で、今も減少中。「経済効率性を維持しながら町並みを残すのが観光都市の基本」と訴える梶浦社長は今後、所有者が町家を利用しない際に観光客に貸し出す事業などで町家活用の道を探る。京都市以外でも古民家を利用したまちづくりコンサルタント事業を計画しており「古きよき日本を残したい。残す方法はあるはず」との思いが新たなビジネスを生んでいる。

[京都新聞 2007年4月8日掲載]

毎月第2日曜日に掲載します。

≪メモ≫庵(いおり)
2003年12月設立。会長は亀岡市在住の東洋美術研究家アレックス・カー氏。茶道や能楽、古武道など専門家による伝統文化研修事業も展開。05年3月には京都市ベンチャー企業目利き委員会Aランク認定を受けた。資本金7500万円、従業員8人。

宿泊向けに改装された伝統的な京町家(京都市中京区・西六角町町家)

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