The Kyoto Shimbun

調湿材の用途拡大成功

大河京都市伏見区下鳥羽中円面田町

 四季で湿度変化の大きい日本では、夏は湿気の多さでカビや悪臭に悩まされ、冬は乾燥で電化製品に影響を及ぼす静電気が発生する。これらの問題解決のため、大河が独自開発したのが、水分の吸収と放出を行う調湿材「ニューブレス・ポリマー」だ。

 事務所の一角で実証研究を進め、和菓子の品質保持や適度な湿度によるバイオリン収納などで実用化にめどがついたという。阿部富士男社長(48)は「食べ物など生活レベルから、環境やエネルギー分野まで」と、新素材の応用範囲の幅広さをアピールする。

 調湿材は、紙おむつなどに使う高分子吸収体に機能改良を加えた製品だ。有機合成化学が専門の同志社大工学部の太田哲男教授らとの連携で開発。水分を吸収するだけでなく、放出する機能も持たせて湿度調整に生かせる技術として特許を出願した。においを除去する機能も付け、4パターンの素材を開発したという。

 2006年10月から、洋服ダンスやげた箱などに入れ、カビや悪臭を抑える調湿シート「快滴くん」を一部ホームセンターなどで販売。主力市場に位置づける産業素材向けでは、医療用ベッドなどで受注を見込んでいる。「08年1月期の売上高は前年の10倍近い10億円を見込んでいる」(阿部社長)  


新素材の用途拡大や商品販売について話し合う阿部社長ら(京都市伏見区)
 大河は米穀小売店「永松」(下京区)を前身とする第二創業型のベンチャー企業。米屋16代目当主の阿部社長は10年前に加工米飯事業に乗り出し、東京の競馬場ですしを販売した。だが、輸送段階で食材の鮮度を保つ難しさに気づき、湿度管理を問題解決のポイントととらえ、同志社大教授らとの産学連携で調湿材開発に乗り出した。

 調湿材開発に成功し、05年7月に京都市ベンチャー企業目利き委員会(委員長・堀場雅夫堀場製作所最高顧問)からAランク(事業成立の可能性大)の認定を受けた。06年4月、永松の新事業部門会社だった大河が本体を吸収合併し、新素材開発ベンチャーとして新たな船出に挑むことになった。

 課題は新素材の用途拡大だが、粘性を高めた丈夫なコンクリートづくりにつなげる素材配合の研究に着手。東京工業大の原子炉工学が専門の教員らとの共同研究で原子力分野での応用も見据えている。阿部社長は「研究のための研究でなく、目的と用途を明確に定めて産学連携を深めたい」と、住宅やエネルギー、環境対策分野での活用を目標に掲げる。

 今年8月には本拠地は京都市に置きつつ、研究開発部門を京田辺市に、営業・総務部門を大阪市に移し、事業拡大をさらに進める。阿部社長は「堀場さんのような経営者をめざし、世界に羽ばたきたい」と夢を抱く。

[京都新聞 2007年5月13日掲載]

毎月第2日曜日に掲載します。

≪メモ≫大河
2001年、阿部社長が家業の永松米穀店の経営を継承。04年、同米穀店の新事業販売部門として大河を設立。06年大河が永松を吸収合併。新素材による商品開発のほか、米穀販売も続けている。従業員約20人。資本金3億1500万円。

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