The Kyoto Shimbun

炭素膜技術 用途拡大へ

プラズマイオンアシスト京都市南区上鳥羽中河原

 まばゆい輝きと希少価値の高さから、最高級の宝石とされるダイヤモンド。その美しさではなく、自然の物質で最も硬いとされる性質を工業利用する「ダイヤモンド・ライク・カーボン(DLC)」のコーティング、という技術が注目されている。

 DLCは、ダイヤモンドに近い特性を持つ炭素などの膜だ。マイクロ(100万分の1)メートル単位の薄さで、硬さはもちろん、摩擦係数が低く耐摩耗性や潤滑性に優れ、近年はハードディスクや工具の表面加工に使われている。被膜可能な対象物が限られ、高コストなど課題も指摘されているが、鈴木泰雄社長(67)は「幅広く実用化できれば、メッキに代わる生産基盤の一つになり得る新素材」と力を込める。

 プラズマイオンアシストは、「プラズマベースイオン注入・成膜」という技術で、顧客が要望する製品にDLCのコーティングを施す。気体が電子とイオンに分離するプラズマ化を活用し、炭素イオンの動きを電圧で制御、被膜対象の表面に注入してDLCの膜を作り出す。対象物周辺にプラズマを発生させる手法などにより、複雑な立体物でも密着度が高く、エネルギー効率が良いために低コスト化も図れる、という。

 また、常温被膜が可能なため、従来は難しかったゴムや樹脂に利用できる。潤滑油を多用できない食品や薬品の生産機械内のゴム部品に重宝され、ゴム製品のコーティングは売り上げベースで6割を占める。

 「例えば、エンジンのピストン部分を被膜すれば、省燃費に向けた軽量化にも役立つ」と、鈴木社長はDLCが持つ可能性の高さを語る。他社が工具向けの加工に力を注ぐ中、市場規模が大きい機械部品などへの利用をねらう。  


プラズマベースイオン注入・成膜技術のコーティング装置をチェックする鈴木社長(京都市南区)
 鈴木社長は55歳のとき、電機メーカーの研究部門から第3セクターの研究所に五年間出向し、プラズマベースイオン注入・成膜技術の研究開発に取り組んだ。メーカーを定年退職後、成果の事業化を目標にプラズマイオンアシストを立ち上げた。

 同成膜技術の利用を求める企業向けのコンサルティングから始め、現在はDLCを使った面照明などの開発も進める。自動車部品への利用などが軌道に乗り始め、2007年6月期の売り上げは「前期より3000万円増の約2億円になる見通し」(総務・管理部)とする。

 鈴木社長は「DLCの成膜技術は、産官学の連携や公的支援を受けて培われた」と強調する。社員は研究所時代の仲間や知人が多く、平均年齢は約60歳だが、「研究に携わった者が成果の実用化と普及を通じて社会に恩返しする。これこそ、還暦ベンチャーにふさわしい役割だ」と胸を張る。

[京都新聞 2007年6月10日掲載]

毎月第2日曜日に掲載します。

≪メモ≫プラズマイオンアシスト
2002年8月設立。04年度に京都産業21、06年度には近畿経済産業局の新産業創出を目的とした補助事業の対象に選ばれた。離型性に優れたフッ素を含むDLCコーティングも手掛ける。従業員9人。資本金4000万円。

DLCでコーティングされた自動車部品など

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