The Kyoto Shimbun

農の“可能性”も提供

小杉農園東近江市五個荘竜田町

 野菜棚には、守山市産のナスなど滋賀県産のとれたて野菜がずらりと並ぶ。見た目がオレンジ色のトマトを試食した客は「果物みたいに甘くてうまい」と、1袋を手にしてレジに向かった。大津市の琵琶湖大橋西詰にある農産物直売施設「ファーマーズテーブル」。小杉農園が運営を担い4月で丸1年が過ぎたが、来店者は前年度に比べて3割増の勢いだ。

 「スーパーや百貨店の野菜にはない新鮮さや農家のこだわりが受けている」と井口誠店長(56)。近く入荷する比良山ふもとですくすくと育つ「比良スイカ」を心待ちにしている。

 ファーマーズテーブルは前身が、道の駅「びわ湖大橋米プラザ」内にあった県運営の近江米PR施設。民間ノウハウを生かし、公共施設を運営する指定管理者制の導入で、小杉農園が2006年4月から運営を始めた。農産物の直売所として再出発。売上高は最初の1年間で約1億3000万円と当初計画を上回った。

 初夏の売り場には、約70品目を超える野菜がそろう。大半はナスやトマトなど季節物だが、県内の登録農家約100人が持ち込んだ野菜を受託販売する形にしている。登録農家は野菜が売れると、手数料を除いた収入が入る一方、売れ残りが続くと持ち込みを減らすため、質の高い農作物が集まるようになる。これに加えて、緑色のナスなど小杉農園が栽培する珍しい野菜も置くことで、食に関心を持つ地元主婦らの注目を集め、何度も利用する人が増えている。

 創業者の小杉長男社長(58)は「農家の台所のように野菜がたくさんあり、地場で頑張る農家と消費者をつなぐ拠点としたい」と思いを語る。

 


地元農家らが手がける旬野菜をそろえた野菜販売コーナー(大津市・ファーマーズテーブル)
 農家出身の小杉社長が1989年、ふるさとの東近江市五個荘で小杉農園を設立したのは、「飯の食える農業」を実践したいと考えたためだ。18歳から20年間、地元農協で営農指導員を務めるなかで、兼業農家が滋賀県の農家の9割を占める現状への違和感や、企業経営センスを取り入れた農業の必要性を感じ、農協を辞して新たな挑戦に乗り出した。

 事業は自家栽培した農作物を直売所で売る仕組みで、花や野菜の苗のほか、年間ベースで約150種と少量多品種の野菜を生産販売している。五個荘にある農園約4・5ヘクタールは所有農地の周辺に土地を借りて広げ、2000年には施設整備を行い「夢のふるさと村」をオープン。ログハウス付きの貸農園のほか、バーベキューやグランドゴルフも楽しめる観光農園施設として、京阪神の家族連れらに親しまれている。

 関心を向けるのは、農業の担い手や農業を知る消費者の育成だ。06年から農作業の基本を教える農業塾を、07年から主婦層向けの体験サロンを東近江市と大津市の直売所2カ所で始めた。団塊の世代は人生第二幕で農業に携わりたいニーズが高く、食の安全安心志向から若い世代でも農業に関心を持つ人が増えたと感じている。小杉社長は「自然の恵みである野菜を育て味わい、自然体験などを通じて癒やしも得られる。農業には多様な可能性が秘められている」と力を込める。

[京都新聞 2007年7月8日掲載]

毎月第2日曜日に掲載します。

≪メモ≫小杉農園
1989年に小杉農園を設立し、野菜・花苗の生産直売を開始。96年有限会社化。東近江市で「夢のふるさと村」をオープンし、貸し農園事業も行う。ファーマーズテーブル事業を含めた総売上高は2007年8月期で3億円を見込む。従業員24人。資本金300万円。

小杉農園のスタッフが栽培した野菜。緑色のナスやカラフルなパプリカなど珍種も多い

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