The Kyoto Shimbun

仮想移動体通信に商機

ゼロ・サム京都市下京区

 NTTドコモとKDDI、ソフトバンクモバイルが独占する携帯電話市場に風穴をあける新サービスが注目を集めている。他社の通信設備を借りて独自サービスを展開する「仮想移動体通信事業者(MVNO)」だ。通信ベンチャーの日本通信や米ウォルト・ディズニーの日本法人などが参入を表明し、サービス本格化の機運が高まってきた。

 携帯電話向けソフトウエア開発を手がけるゼロ・サムもまた、MVNOにビジネスチャンスを見込む。狙うのは携帯電話サービスそのものでなく、端末の機能やコンテンツ(情報の内容)の開発支援だ。MVNOは大手にない特色を出すため、端末の機能やソフトの開発を専門企業に任せる可能性が高い。菊池力社長(30)は「一社でインフラもサービスも作る垂直統合から、複数の会社が役割分担する水平分業の時代が来る」とみる。

 同社はすでにMVNOの先進地である米国で実績を挙げている。2005年、西海岸を中心に若者の人気を集めていたMVNOのアンプド・モバイル向けに、携帯電話の画面にサービス内容を表示する組み込みソフトを提供した。米国で磨いたノウハウにより、「国内でもMVNOを目指す複数企業と仕事をしている」(菊池社長)という。

 


平均年齢28歳前後の若いスタッフを束ねる菊池社長(中央)。MVNOのサービス開始にビジネスチャンスを見込む(京都市下京区)
 飛躍を期待するもう一つの事業は、携帯電話の普及が爆発的に進むインドでのコンテンツ配信だ。昨年1月に現地子会社を設立。同10月から現地携帯電話会社に対し、自社開発のゲームや日本のコンテンツ開発会社が作成した壁紙素材の配信を始めた。他の携帯電話会社とも商談を進めている。

 菊池社長は「インドの企業と仕事をする機会があり、現地を訪れて携帯電話市場の可能性の大きさを実感し、進出を決めた。日本ならではのコンテンツや機能を紹介していく」と意気込む。

 菊池社長はもともと技術畑ではない。大学は経済学部で、パソコンなどのIT分野に関心が強いわけでもなかった。大学卒業後は「組織の歯車になる大手より、仕事全体が見渡せるベンチャーがいい」と東京のITベンチャーに就職。京都の研究開発部隊に配属された。そこでコンピューター言語などを猛烈に勉強し、ITの知識を身に付けた。

 研究開発陣が独立して京都でベンチャーを旗揚げしたときも参加。携帯電話用コンテンツの圧縮ソフトを共同開発して販売実績を挙げるなど活躍した。その後、会社との方針の違いで退職したが、取引先だったトーセの齋藤茂社長に起業を勧められ、出資の支援も受けて04年に会社を設立した。

 創業期から携帯電話向けソフトの受託開発を主力にしてきたが、MVNO関連の仕事も徐々に増え、07年8月期には売上高の半分近くを占めるまで割合が高まった。菊池社長は「将来はMVNO関連をメーンにする。新規上場も目指したい」と青写真を描いている。

[京都新聞 2008年2月10日掲載]

毎月第2日曜日に掲載します。

≪メモ≫ゼロ・サム
2004年6月設立。資本金9165万円、従業員16人。携帯電話向けのシステムやソフトウエアの開発、MVNO支援などを行う。07年8月期の売上高は6千万円。

ゼロ・サムがインドの携帯電話会社向けに開発したゲーム

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