Kyoto Shimbun 2004.2

伝統と遊び心を融合
  辻和金網(京都市中京区堺町通二条上ル)

くぎを打ち付けた作業台で金網づくりに取り組む辻さん。手作りならではの魅力が固定客の獲得につながっている(京都市中京区)
 ガラス張りの店舗に入ると、ステンレスや銅の針金を精巧に編み込んだ茶こしや杓子、焼き網などが陳列棚に並ぶ。そのすぐ奥に設けられたたたきには職人たちが腰掛け、作業台を前に黙々と金網づくりに打ち込む。売り場と作業場が一体化したその店構えは、どこか懐かしさを漂わせている。

根強いファンも

 機械で加工した金網製品が量販店にあふれるなか、手仕事による製品作りにこだわる京金網職人。その代表的な存在が、1927年創業の辻和金網だ。単価は1個数千円が主流だが、一流料亭や陶器店、近隣住民などに根強いファンを抱え、テレビや雑誌を目にした観光客もしばしば製品を買い求めに立ち寄る。

 「昔は問屋にも製品を卸していたが、安価な機械加工の製品が出回り、単価が折り合わなくなった。だから、お客の要望に合わせた付加価値の高いものづくりを大切にしている」と二代目店主の辻善夫さん(69)。出来合いの製品だけでなく、「編み目は3ミリ角で」「直径はこれぐらい」など、形やサイズ、編み方などに対する要望に耳を傾け、オーダーメードで製品を作りあげていく。

魅力づくり工夫

 デザインへのこだわりも特徴の一つだ。亀甲編みや菊出しといった伝統的な技法を踏襲しつつ、編み目の大小に変化をつけたり、模様に見せるために効果的な編み方を取り入れるなど、見た目の楽しさも追求する。実用性とともに、顧客とのやりとりから着想を得て、さまざまな遊び心を取り入れる。

 金網ならではの特性を生かした製品開発にも取り組んでいる。花かごや花立てのほか、和紙のスタンドやガラスの器の周囲を金網で覆うなど、道具に装飾性を加えることで、新たな魅力をつくり出している。辻さんは「京都が綿々と培ってきた伝統的なものづくりを守ることは大切だが、新しい感覚も取り入れていかないとブランドとして生き残れない」と話す。

 こうしたものづくりに対する姿勢を子どもたちにも知ってもらおうと、修学旅行生の体験学習や近隣の小学校での講習にも積極的に取り組んでいる。「金網だけでなく、道具に対する愛着や価値観を将来にわたってはぐくみたい」と辻さん。古希を前にしても、京都ならではのものづくりの継承に意欲を見せている。

 ここがポイント
<顧客と対話しながら製作>
 工芸技術に詳しい京都市産業技術研究所の佐藤敬二研究部長
 ちょっとしたデザインの工夫や顧客と対話しながら製作過程を見せるアットホームな店づくりが好感を集めている。物産展などでの製作実演にも積極的だ。消費者にものづくりの魅力を伝えたいという店主の思いが、製品ににじみ出ている。

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