Kyoto Shimbun 2004.4

織りの技 風味に融合
  京西陣菓匠(米菓店・京都市上京区鞍馬口通大宮西入ル)

来店した客と談笑しながら、商品の特徴を説明する店主の山本さん(京都市上京区)
 大徳寺から南へ徒歩約10分の古い町並みの一角に、町家を改装した店舗がたたずむ。桜色ののれんを掲げた店先には、焼き網を前にせんべいを焼く店主の山本佳明さん(30)の姿がある。「1枚いかが」。初めて来店した客には、必ず手焼きのせんべいと茶を振る舞う。

本物志向で拡大

 四年前にせんべい専門店を創業して以来、手づくりの本物志向にこだわってきた。1枚のせんべいにかける時間はときに10日にも及ぶ。そんな姿勢が地元住民や観光客の好感を呼び、リピーターを拡大。売り上げは創業時の約3倍に伸び、雑誌にも紹介された。ともに店に立つ妻の忍さん(29)は「『知人に聞いて来た』というお客が増え、顧客の広がりを実感している」と手ごたえを話す。

 山本さんは大阪府守口市のせんべい店の長男。大学卒業後、和歌山県などの他店で修行を積み、家業を手伝うようになった。だが、大量生産のせんべいやおかきが出回り、米菓離れが進む現状に、せんべい職人としての将来に不安を感じた。

 忍さんとの結婚を前に左京区で老舗料亭を営む義父に転職を相談すると、「一度、西陣織の職人の仕事を見たら」と勧められた。紹介された伝統工芸士の職人の元に通い詰め、その奥深い技法に感銘を受けた。「本物を作り続ければ生き残れる」。職人のそんな言葉にも勇気づけられ、西陣で開業することを決めた。

京都らしさ人気

 西陣織の技法に触れた経験は、商品にも生きている。「絣(かすり)」や「綴(つづれ)」などの織り物にちなんだ名前をつけ、その特徴にぴったりの風味を追求した。一番人気の「天鵞絨(びろうど)」は、焼きたてのせんべいに白みそと白しょうゆをしみこませて乾燥させ、絹の光沢のような照りと柔らかい食感を実現した。「朱珍」は、七彩と称される色彩豊かな模様にちなみ、7種のせんべいやおかきが入っている。西陣織の模様をプリントした包装も「京都らしい」と人気だ。

 商品づくりだけでなく、客とのコミュニケーションも重視する。せんべいと茶のもてなしを通じ、客にせんべいづくりへの情熱を語りかける。一度来店した客には新商品情報を載せたダイレクトメールを郵送している。

 「洋菓子に負けない、せんべいやおかきの魅力を伝えたい」と山本さん。京ならではの本物志向を引き継いでいこうと意欲を燃やしている。

 ここがポイント
<味と姿 お客に好感>
 商品を仕入れている京都ブライトンホテルの柿倉秀輝宿泊部次長
 3年前からVIPルームの菓子に使っているが、お客が残すことはまずなく、問い合わせもひんぱんにある。おいしいだけでなく、一枚一枚が実にきれいに作られている。お菓子に対する店主の姿勢も、お客の好感を集めているのでは。

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