Kyoto Shimbun 2004.7

客にぴったりの1枚
  谷口シャツ(シャツ専門店・京都市下京区河原町通松原下ル)

店頭での会話を通じて顧客が望むシャツ作りに生かしている谷口社長(右)=京都市下京区の本店

 生地選びから仕立てまで、客一人ひとりにあつらえるオーダーシャツの専門店。安売り数百円のワイシャツも珍しくないなか、大半が1万円以上と高額だが、本物志向の顧客から厚い支持を集めている。
 店内は、輸入物をはじめ2000種以上の生地をそろえ、壁一面にずらりと襟型が並ぶ。店舗奥に工房を持ち、顧客の望みを聞きながら熟練職人がぴったりの一枚を仕立てられるのが強みだ。
 百貨店が並ぶ四条河原町近くの激戦区だが、谷口仁一社長(44)は「シャツ作りは仮縫いなしの一発勝負。オーダーは100%の満足感がないとだめだ。商品の豊富さと品質では絶対に負けない」と自信をみなぎらせる。

顧客と共同で創作

 品ぞろえには顧客の要望で生み出したオリジナル品も多い。ボタンダウン、ピンホールなど3種類の着方を楽しめる襟型や時計盤だけを外に出せる腕時計用の袖口など、多彩だ。
 「時代の流れを読みながら顧客と共同作業でものづくりをし、常に新鮮味を加えている」と谷口社長。長く着てもらうため洗濯時の縮みを計算した仕立てやクリーニング店選びのアドバイスにも気を配る。
 1877(明治10)年の創業で、初代は足袋や木綿着を仕立てていたが、大正期に洋装の流入に目を付けた二代目がワイシャツの仕立てに転換。当初は外国人からシャツを譲り受け、解体して研究を重ねた。戦後、既製品に押されるなどして、シャツ専門店は京都市内で五軒程度に減ったが、根強いファン層に支えられてきた。

たんすの中わかる

 親子3代の得意先をはじめ顧客数は2000人以上にのぼり、40年足らずで280枚以上を作った常連客もいる。「うちの宝物」という厚紙の顧客カードは、採寸データに加え、過去に仕立てたシャツ一枚一枚の生地見本を張り、襟型やカフス、ステッチ形状などを詳細に記録。シャツにも襟裏のタグに購入日と製造番号を記している。谷口社長は「客の好みや上着との組み合わせなど、たんすの中まで分かる」といい、新たに何を勧めるか、客側からの追加注文、補修にも即座に対応できるようにしている。
 バブル崩壊後の不況で高額品への客足が鈍るなか、7年前から1万円前後のイージーオーダーを開始、インターネット通販も手掛ける。生地メーカーの協力や型代の省略で価格を抑えつつ、プロの技術を広めることに力を注いできた。
 オーダーの平均単価は1万8000円程度とバブル期から5000円近く落ちているが、昨年ごろから徐々に高級品の注文が戻り始め、年商は二けた増の約7000万円と、業界でも突出している。
 谷口社長は「いい物を求める顧客志向が再び高まっている。絶対に品質を落とすことなく、客の立場に立ったものづくりを貫いていきたい」と言葉に力を込める。

 ここがポイント
<顧客育てる姿勢に深さ>
 15年来の常連客の山本善嗣ネッツトヨタ京都社長
 同じ小売業の立場からマーケットの絞り込みとユーザー管理の奥深さに学ぶところが多い。客の好みを知った上で、幅広い選択肢から最も気に入るものを提案することで、客を育てている。

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