Kyoto Shimbun 2004.10

提案型の販促が奏功
  もとやま畳店(畳製造販売・京都市北区紫野門前町)

店頭に畳の小型サンプルを置き、四代目の浩史さん=写真右=たちがイ草の産地や肌触りを顧客に説明する(京都市北区)

 京都市北区の大徳寺近くで80年近く店を構えている。生活スタイルの洋式化でじり貧になる畳店が多い中、この10年で売り上げを2倍近くに伸ばした。顧客にとって分かりやすいように価格体系を明示し、提案型の販売に力を入れたことが奏功している。

 三代目の本山泰三さん(66)、四代目の浩史さん(39)親子が中心となり、畳の製造から販売、納品までを手掛けている。

 浩史さんは以前、大手旅行代理店で4年ほど働いていた。添乗員として各地を訪れると、高級旅館でも畳の手入れが行き届いていない所が目に付いた。そんな経験が、積極的な販促活動に注力するきっかけになった。

顧客情報を把握

 「畳店は職人気質の世界で、請け負った仕事はしっかりとやる。しかし、メンテナンスを含めてこちらから働き掛けるサービス面の努力が足りなかった。時代の変化で、お客さんもいつ畳を替えたらいいか分からない人が増えている」と浩史さん。地元を中心に1千軒以上の顧客情報をパソコンで管理し、顧客はどんなタイプの家に住み、和室の部屋は何室か、いつ畳替えを行ったかなどを把握。畳のはり替え時期を迎えた顧客に案内ハガキを送り、潜在的な需要を着実に掘り起こせるように努めている。

 価格面では新品で1畳1万千円以下の畳表は中国産、それ以上は国内産であることをチラシに明示している。浩史さんは「長く商売を続けるには、正直に徹することが一番大切」と話す。見積もり時には畳の小型サンプルを持参し、畳表に使うイ草の産地や肌触りを確認してもらう。価格とそれに伴う品質の違いを説明し、「畳替えはお金がいくらかかるか分からない」という新しい顧客の不安を取り除くという。

カラー畳演出も

 取引先は海外にも広がっている。5年前、浩史さんは米国に住む親せき宅に1カ月滞在し、現地の日本食レストランや茶道関連の施設に畳のはり替えをすすめる電話をかけてみた。米国では、畳の修理業者が少なく、傷んだまま畳を放置しているケースが多かった。すぐに50軒近い取引先が生まれ、今では現地に契約スタッフを常駐させるまでになっている。

 京都の有名な社寺や茶室にも畳を納める裏打ちされた技術の一方で、既成概念を打ち破る商品開発も進めている。洋室の一角に畳を置いても違和感がないように、多彩な「カラー畳」で市松模様を演出したり、へりのない畳を販売するなど工夫を凝らしている。東京・六本木ヒルズの飲食店には紫色の畳を納品した。

 浩史さんは「最高級の製品を作れる技術はもちろん、今の時代は顧客が何を求めているかを的確に判断し、提案できる力が問われている」と強調する。将来的には顧客の利便性を考え、畳だけでなく、家具や内装業者と協力して総合的なサービスや展示場ができないか−。異業種交流の中で模索している。

 ここがポイント
<仕事は誠実でまじめ>
 取引先で数寄屋建築で知られる中村外二工務店(北区)の中村義明代表
 うちで作る茶室にも畳を納品してもらっているが、まず職人として誠実でまじめに仕事に取り組んでいるのが一番。そのうえで時代の変化を敏感に察知し、顧客を大切に育てている。良質の顧客が増えれば、技術も一層磨きがかかる好循環が生まれる。

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