Kyoto Shimbun 2005.2

生き残りへ地域密着
  集・酉・楽 サカタニ(京都市東山区七条通本町西入ル)

自由に飲食ができるスペースを備えた酒の専門店(京都市東山区)

 東福寺や京都国立博物館などが近い京都市東山区の七条通。鴨川から三十三間堂までを結ぶ七条鴨東商店街は地域住民だけでなく、学生や観光客らの行き来も多い。

 商店街の中でも鮮やかなオレンジ色の柱が特徴的なサカタニの2階建てビルはひときわ目立つ存在だ。壁には、周辺の史跡や名所などの場所を示す大きな地図が看板代わりにかかっている。

 創業1913(大正2)年の酒販店。20年前から経営しているコンビニエンスストアの上の階に酒の専門店を持つ珍しい構造だが、さまざまな集客の仕掛けがある。

 取締役相談役の酒谷義郎さん(70)が持ちビルを改装したのは昨年4月だった。当初は1階に酒販店とコンビニエンスストアを設けていたが、近くに別のコンビニエンスストアが出店したほか、酒の小売り自由化で競合店も増えたため「これからの厳しい時代に生き残るためにはもっと地域のお客さんと密着する必要がある」と決断した。

人が集い楽しく

 新しい建物は「人が集い、酒を楽しむ場に」との願いを込め「集・酉(ゆう)・楽」と名付けた。1階はコンビニエンスストアの営業を継続し、事務室を除いて約260平方メートルある2階に酒の専門店を移して拡充した。2階にはライブ演奏や落語会、絵画展などを催す貸し会場とコンビニエンスストアで買った商品を自由に持ち込める飲食スペースも確保した。この空間は、近くの事業所で働く女性や学生らに好評で、平日の昼食時には約30席がほぼ満席になる。

 専門店は、売上高の約9割を占める1階のコンビニエンスストアとすみ分けを図っている。1階ではビールや発泡酒、焼酎(しょうちゅう)などをそろえるが、2階では日本酒を中心に展開している。

 出荷量の減少が続く日本酒だが、酒谷さんは「日本酒は世界でも唯一の複式発酵で生まれる高品質の酒。食事を楽しむための提案など売り方を工夫しているので、売上高は少しずつだが増えている」と話す。キャンペーン商品や推しょう品は店内で試飲でき、希望があれば酒の製法や特長などをていねいに説明している。

「ご用聞き」強化

 「地域密着」を実践するため、顧客宅を回って注文をとる昔ながらの「ご用聞き」を強化している。独自の会員組織「友の会」のメンバーは現在約300世帯で、今春には400世帯以上の参加を目指している。店舗の改装後、季節の話題や貸し会場での行事予定などを発信する情報誌「とんからりん」を毎月発行し、会員宅に配っている。

 「情報通信技術がどれだけ発達してもモノと心は自由に動かせない。お客さんのためになることは何でもやっていきたい」。ピンチをチャンスに変えるプラス思考が酒谷さんのおう盛な事業意欲の源泉になっている。

 ここがポイント
<会員制で今風に復活>
 京都府中小企業総合センターの町野覚専門員
 積極的な経営に地域で生きてきた酒屋の意地を感じる。小売り自由化でスーパーやコンビニエンスストアが次々と参入する中、再び地域密着に活路を見いだした意義は大きい。昔ながらのご用聞きを会員制の形で復活させる取り組みに注目している。

INDEX