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動き出した産学官連携


5.技術移転
▽特許への対応 課題に
関西TLOの技術移転で実用化されたソフト。大学独法化で技術移転にどう変化が表れるのか(京都市左京区・京都大) 大学教員の研究成果を特許申請し、権利化して企業が実用化。企業から得た権利使用料は大学と教員に還元してさらなる研究を促す。技術移転機関(TLO)は、技術の実用化を目指す研究者と新技術を求める企業の出会いを提供する重要な役割を果たしている。

 「自分で製品化は難しい。TLOがあってこそ実用化できた」。京都市左京区の京都大研究室で小泉昭夫教授は感慨にふける。昨年末、開発した医療事故防止ソフトが中小企業のユニワーク(福知山市)に技術移転され、研究成果が事業に実を結んだ。

 現在全国で27機関に増えた承認TLO。関東は1校1TLOが主流だが、京都では複数の地元大が参加する広域型の関西TLOが技術移転を担い、8件の研究成果を実用化に結びつけた。

 小泉教授のソフトを事業化した細見健介社長は「中小企業には敷居の高かった大学が今は身近に感じる」と話す。研究費用や施設、人材が乏しい中小企業がTLOに寄せる期待は大きい。「受け身だった大学側から共同研究の呼び掛けが増えた」(大日本スクリーン製造)と産学連携の気運が高まりを見せている。

▽独法化で「異変」

 だが、ここにきてTLOに1つの大きな課題が持ち上がってきた。懸案は04年度からの国立大独立行政法人化だ。

 「京都大の発明だけでも膨大な数に上り、特許の申請のふるい分けだけでも大変」。関西TLOの担当者は頭を悩ませる。現在、教員の特許は個人帰属で大学所有の特許は全体の15%に過ぎなかった。だが、独法化後は大学帰属が原則となるため、学内に埋もれていた研究成果も合わせ、すべてが大学所有となる。

 膨大な数の特許への対応を見据え、関西TLOの中核、京都大では「独法化に向け、大学独自のTLO設立の動きが出てきている」(大野豊関西TLO社長)。また、文部科学省も03年度概算要求で学内特許を管理する「知的財産本部」整備事業を打ち出した。

▽TLO、転機に

 だが、大半の大学では独法化後の技術移転の仕組みは未定で、知財本部とTLOの業務の住み分けが不透明だ。一校一TLO体制で多くの特許を扱ってきた理工学振興会(東工大TLO・横浜市)は「実務経験のない大学の知財本部が今以上の特許をさばけるわけがない」(清水勇専務)とし、大学とTLOを融合した産学連携センターの設立が急務と主張する。

 多くの大学と企業を擁し、知的財産があふれる京都。松重和美京都大大学院教授は「多大な費用がかかる特許申請は、従来通りTLOなど第三者の客観的な判断が適切ではないか」と独法化後を見据える。大学の制度改革に対応して、転機のTLOをどう活性化させるか。新たな技術移転の仕組みづくりが求められている。

=写真=関西TLOの技術移転で実用化されたソフト。大学独法化で技術移転にどう変化が表れるのか(京都市左京区・京都大)


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