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動き出した産学官連携


 不況や技術の先進化で、一企業だけで研究開発を行う自前主義が崩れつつある。代わって期待を集めているのが、知的財産の宝庫である大学の役割だ。大学の街・京都で学のシーズ(種子)を産業に結実させる気運が高まってきた。成功のカギを握る取り組みや機能をリポートする。(社会報道部・経済産学官取材班)

1.フロンティア
▽ナノテクに京都集結
 数100万冊の図書情報を角砂糖サイズのチップに収める。原子1個1個を操って鉄より軽く、硬い金属をつくる。新しい材料や半導体をナノ(10億分の1)メートル単位の物質操作で生む「究極の錬金術」。それがナノテクノロジーだ。京都の産学官が、この先端技術に地域産業の未来をかけ、大きな一歩を踏み出した。〔詳報〕
京都大では、走査型プローブ顕微鏡などを使い、原子スケールで物質を観察する研究が進む(京都市左京区)

2.サイエンスパーク
▽新産業へ基盤作り
 集積と発展。1990年代の関西文化学術研究都市は、そんな形容にふさわしい活況を呈していた。73の施設が立地する建設ラッシュ。ロボットやバイオ、環境技術など、画期的な研究成果も次々と花開いた。しかし、長引く不況が暗転をもたらす。民間研究所の相次ぐ閉鎖だ。ここ2年間で住友金属など4研究所が人員を引き揚げた。〔詳報〕
ロボットを開発する国際電気通信基礎技術研究所の研究者ら。蓄積した研究成果を生かす仕組みが求められている(京都府精華町・同研究所)

3.大学発ベンチャー
▽技術力で起業に挑戦
 ハイテク機器に囲まれて、無数のカイコがうごめく。京都工芸繊維大(京都市左京区)の蚕糸・昆虫利用学研究室。身近な研究材料をビジネスの種に産業界へデビューする教員が増えている。同大学の「大学発ベンチャー」第一号の森助教授のシーズはカイコだ。〔詳報〕
ビジネスの種にカイコを使うプロテインクリスタルの社員(京都市左京区・京都工芸繊維大)

4.起業家育成
▽経営面への支援不足
起業家に事業所を有利な条件で貸して業務支援し、軌道に乗るまで手助けする。企業という卵を温めてかえす役割を担うインキュベート(ふ化)施設は、大学発ベンチャーや企業からの転身者の受け皿となり、起業家を育成する基盤だ。〔詳報〕
ふ化施設ではマネジメント機能充実の模索が続く(京都市下京区・京都リサーチパーク)

5.技術移転
▽特許への対応 課題に
 大学教員の研究成果を特許申請し、権利化して企業が実用化。企業から得た権利使用料は大学と教員に還元してさらなる研究を促す。技術移転機関(TLO)は、技術の実用化を目指す研究者と新技術を求める企業の出会いを提供する重要な役割を果たしている。
〔詳報〕
関西TLOの技術移転で実用化されたソフト。大学独法化で技術移転にどう変化が表れるのか(京都市左京区・京都大)

6.コーディネーター
▽企業と大学を橋渡し
 「死の谷」という言葉がある。学究の場である大学と利潤を追求する企業。立場の違う両者が手を携える際の障害をたとえている。結婚に仲人がいるように産学連携にも橋渡し役が必要な時がある。その切り札として注目を集めるのがコーディネーター(調整役)だ。
〔詳報〕
共同研究の進め方を話し合う上田研究員(右から2人目)ら。産学をつなぐ役割を研究員が担っている(京都市左京区・京都工芸繊維大)

7.オール京都
▽公の役割 より全面に
 長引く不況で苦境にある地域経済。ベンチャー都市と呼ばれる京都でも、バブル期のピークを境に廃業率(3・4%)が開業率(2・3%)上回るようになった。「ものづくりを中心にもう1度、京都を活性化したい」。村田純一京都商工会議所会頭がこう期待を込める「京都産学公連携機構」が今春、始動する。〔詳報〕
京都産学公連携機構の設立に向け、参加団体による準備作業が始まった(京都市中京区・京都商工会議所)

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