|
アサヒビール社長 瀬戸 雄三氏 主力の「スーパードライ」が、一九九七年の年間出荷量で初めてトップ銘柄の座を占めた。低価格の発泡酒の台頭や酒類の多様化で、大手メーカー各社が軒並み低迷するビール業界で唯一、増収増益の快進撃を続ける。スーパードライは発売十年を経て国際ブランドに成長し、九七年末に中国・青島ビールと合弁企業を設立するなど海外の生産拠点も増えた。営業畑一筋に歩み、ドライ拡大路線の陣頭指揮を執る瀬戸雄三社長に今後の事業展開や戦略をきいた。 きめ細かく鮮度管理 ―発売十年でトップ銘柄に成長させた秘けつは。 「かつてビールのシェア変動は、年間〇・二―〇・三ポイント。それがここ数年は大きく変わった。もちろん、味覚の変化も影響しているだろう。『スーパードライ』の年代別調査をみると、二十歳代の支持は、九六年の四六%から一年で六二%になった。この支持率の高さで、商品への絶対的な信頼度を高めている。わが社では『スーパードライ』を太陽に例えている。太陽は一つだけ。主力商品は一つで十分ということだ。その周りに違いのはっきりとした個性的な惑星をちりばめたい。しかし、発泡酒は絶対に作らない。本物しか作らないという座標軸を守れば、九八年も売り上げ二ケタの伸びができるだろう」 ―本物の味を守るには、鮮度管理が大切だが。 「九七年は社員一人に一台のパソコンを配備した。携帯型ノートパソコンを持つ九百人の営業マンは、市場情報を集める一方、小売店へきめ細かな支援情報も提供している。また、千六百人のマーケットレディが、小売店に並ぶ商品の日付を電子手帳で入力し、三カ月を過ぎたビールはすぐに回収するなど、きめ細かく鮮度管理している。九八年は、さらに力を発揮するだろう」 ―国内市場拡大の一方で、昨年十二月には青島ビールと合弁会社を設立しているが、海外戦略は―。 「中国は九三年末から経営参加をはじめ、北の北京から沿岸地域に五社六工場がある。中国で最も知名度の高い青島ビールとの合弁設立は、中国でのビール事業の総仕上げになる。九六年推計によると、中国は世界第二位のビール大国で、二〇〇〇年には生産量が世界一になるだろう。市場としての伸びも期待できる。ビール本場といわれたドイツでも『スーパードライ』は好調だ。昨年末までにドイツ国内の百軒以上のレストランに商品を納入できた。現在、カナダとイギリスにも生産拠点があるが、九九年までにヨーロッパ大陸に新たな生産拠点を設けたい」 全工場をごみゼロに ―昨年、温暖化防止京都会議が開かれ、地球環境に配慮した取り組みが企業にも期待されている。 「九六年の茨城工場をはじめとして、九八年末までに全工場でごみゼロを実現する。同時に名古屋工場はノンフロン工場に、東京、吹田の二工場は廃水処理で発生したメタンガスを利用する省エネ工場になる。ビール工場から地球を汚すものを一切出さないという記録に挑戦するため、生産現場も燃えている。今は社全体がいい循環を作る時期。日本経済は厳しい状況が続いているが、わが社はかつてのドン底の危機感の体験をバネに乗り切っていく」 |