京滋の主要企業トップ
「品質第一」 今後も不変 −ローム社長・佐藤研一郎氏
 国内景気の回復が鮮明になってきた。バブル崩壊後の「空白の10年」を経て3度目の回復局面だが、厳しいリストラを経験した企業業績も大企業を中心とした回復感が中小へ、地方へと広がりつつある。企業の永続的な発展のために、新たな成長シナリオを描くべき時だ。京滋の主要企業のトップ17氏に聞いた。
 京セラ社長・西口 泰夫 氏
 オムロン社長・作田久男 氏
 日本電産社長・永守重信 氏
 京都銀行頭取・柏原康夫 氏
 島津製作所社長・服部 重彦 氏
 宝ホールディングス社長・大宮久 氏
 堀場製作所社長・堀場厚 氏
 村田機械会長・村田純一 氏
 ワコール社長・塚本能交 氏
 滋賀銀行頭取・高田紘一 氏
 ニチコン社長・武田一平 氏
 大日本スクリーン製造社長・
 平和堂社長・夏原 平和 氏
 京都中央信用金庫理事長・
 ジーエス・ユアサ
 村田製作所社長・村田泰隆 氏
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 さとう・けんいちろう 立命館大理工学部卒。1954年に東洋電具製作所を個人創業し、58年に会社を設立。81年に社名をロームに変更。91年設立の音楽財団「ロームミュージックファンデーション」の理事長も務める。
 −今の好況をデジタル景気ともいいますが、その背景をどう見ますか。

 「確かにデジタルで情報を送受信すると非常に多くのデータが送れるようになる特長があるが、それがどんな景気につながるというのか。デジタル景気なんて皆さんがお作りになった言葉ではないか。10年も不景気が続くと、我慢していた買い換えの需要だって出てくる。街にある商品も随分安い。デフレの恩恵にあずかっているのに、気づいていないのではないか」

 「デフレは困ったという声もあるが、銀行や大企業がつぶれたという局部的な動きだけを見て言っているのでは。日常生活ではだれも困っていない。経済モデルはとっくに変わった。前の世界に生きている人は苦しく、現在の世界に対応した人は好調を続ける。そういうことではないか」

 −そうした新しい経済モデル下で、会社をどのように成長させますか。

 「中国が追いつけない新技術で生きていくことだ。追われる身なので後ろよりも速く走らないといけない。オリンピックで1位になる必要はない。それなりの大会で1位であることが大事だ。ただ、単純商品は2、3位に落ちるだろう。たとえば抵抗器。僕が抵抗器を作り始めたころは1個5円だが、今や月100億個作って1個10銭ぐらい。そこで中国などと競争して1位になるのは難しい」

 「技術の余力がある分野で勝負する必要がある。やはり品質、特に製品の寿命に関する品質が大事だ。それを支えるのは生産技術。新商品を開発することも、その商品を欠陥なく大量に作ることも先端技術だと思う」

 −品質という付加価値が現在の高利益につながっているといえますか。

 「品質を忘れると、中国や台湾との価格競争に巻き込まれてしまう。ただ、品質維持にはコストがかかるだけに、高いお金をいただいてもいいと思う。当社の品質がいいと顧客が認めてくださるから、高くても買っていただいている。結局、いいものは高く売れる。何を作らせても品質第一を掲げているし、それはこれからも変わらない」

 −飛躍を期待する新分野は。

 「バイオ事業だ。当社の場合は、半導体技術と生命科学を融合させた生命工学の分野を目指す。DNAがいいと思うんだが、当面は特殊な抗体や酵素をチップで検知して、体の中で起こっていることを調べる装置を開発している。わざわざ病院に行かなくても、家庭で健康状態を簡単に調べられる製品にしたい」

 −音楽財団を通じた若手音楽家の支援や大学への施設寄付など、社会貢献にも熱心ですね。

 「地域のためなんて、大それたことは考えてないけど、できるだけ多くの音楽家にできるだけ多くの額を援助していきたい。立命館大や同志社大、京都大に施設を寄付したのは、当社がここまで来られたのは大学のおかげという思いがあるから。大阪や東京に本社を置いていたら、いい人材は集まらなかっただろう」

 −理想の後継者像は。

 「顧客にも社員にも信望があるか、修羅場を切り抜けられる知恵と根性があるかだ。もう一つ、経営者に必要なのは運と努力とDNA。やはり持って生まれたものがないといけない。ただ、会長になって院政を敷きたくはないし、生きている間は続けたい。売上高5000億円、経常利益1000億円を常時突破させる最大目標もある。それが顧客にも信用されて、社員もこの会社にいて良かったと思える規模だと思う」(聞き手は社会報道部・経済 高野英明)=2004.08.10