The Kyoto Shimbun

角膜解析使い手作り

サンコンタクトレンズ京都市中京区

 機械音が軽快に響く京都市中京区の大宮工場。旋盤でハードコンタクトレンズの素材となるアクリル製の円柱が削られていく。電送された角膜のデータに合わせ、切削を繰り返してレンズの形に近づける。最後に手作業で研磨すると世界に一つしかないレンズの誕生だ。村上登生産部門長(47)は「レンズのカーブは27段階、度数は40段階。角膜に合わせて1000種以上の形に対応できる」と胸を張る。

 使用者は本当に目に合ったレンズを使っているのか。レンズ製造会社に勤めていた大橋敏夫社長(74)は20代のころ、レンズを研磨して調整するたびに疑問を持った。コンタクトレンズが出始めた昭和30年代は数少ない種類から適当と思われるレンズを選択するのが主流。だが、「人によって形状の違う角膜に合わせてレンズを作るのが当たり前」と持論を展開した大橋社長は会社を飛び出し、オーダーメードのレンズ会社を設立した。

 オーダーメードはよく目になじみ、まるで付けていないような一体感がある。その製造で難しいのは縁の部分。微妙な曲がり具合の良しあしで異物感や痛みが発生する。黒目の縁をレンズの縁に合わせるには角膜の形を知ることが必要だ。

 サンコンタクトレンズの技術の要はこの角膜解析にある。レンズの調整技術で評価が高かった同社は、1977年に京都府立医大から角膜検査機器の開発を依頼された。豊富な経験を元に解析装置の研究を重ね、開発したのが世界初の「フォトケラトスコープ」だ。  


円形の角膜解析データに合わせ、最後に手作業で仕上げるレンズ(京都市中京区・サンコンタクトレンズ大宮工場)
 スコープは、目を立体でとらえ、黒目の丸さや長径、短径を等高線のようにリングで割り出す。目の形状を円形で読み取り、グラフ化するため、レンズと角膜の合う精度は一気に高まった。当時、装置の開発に取り組んだ丸山節郎医療システム事業部長(61)は「目の形を何とか知ろうと円による角膜解析を突き詰めた。今度は動画で解析し、ネットを使いリアルタイムで送信できる装置を開発したい」と意気込む。

 最近は大量生産の使い捨てレンズが幅をきかせ、オーダーメードは一握り。その中で同社はマイスター制度を持ち、研修を積んだ営業社員が得意先でレンズを削る。徹底した職人主義だ。

 「最も非効率な製造業かもしれない」。レンズの話になると時間を忘れて話に没頭する大橋社長。頑固なレンズメーカーの技術への誇りが垣間見えた。

[京都新聞 2007年3月18日掲載]

 脈々とものづくりの技が受け継がれている京都と滋賀には、こだわりの技術を磨き上げ、業績を伸ばしている企業が数多くある。大手企業の製品を影で支える京滋の中小企業の独自技術に光をあて、ものづくりの原点を探る。  毎月第3日曜日に掲載します。

≪メモ≫サンコンタクトレンズ
1971年に京都市南区に設立。資本金3200万円。社員161人。2005年度の売上高は44億円。オーダーメードのハードコンタクトレンズの製造専門で角膜の形状検査装置の開発販売も手がける。

旋盤に取り付けれた円柱の素材を削ってレンズの形に仕上げる

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