The Kyoto Shimbun

熟練 複雑な形も自在

宮川バネ工業東近江市園町

 銀色に光る金属の板やワイヤを紡ぎ出し、あらゆる方向から折り曲げる。自由自在にばねの形を作りあげる工場の主役「フォーミングマシン」が金属を加工して次々とばねをはじき出す様子はまるで飴(あめ)細工のよう。強く美しい精密なばねが誕生する瞬間だ。

 元は大阪にあった宮川バネ工業は精密ばねを専門に手がけている。精密ばねは多品種少量生産の複雑な形状が多く、家電製品から自動車のエンジンやブレーキ、コンピューター、デジタルカメラなどあらゆる機器に欠かせない部品となっている。

 同社には金属を加工するフォーミングマシンが約20台あり、関西最大級の生産規模を持つ。ばねを形作る同社のフォーミング技術は複雑な形状を一工程で作るのが特徴。受注先の設計図通りに早く安く作るという従来型の製造はせず、設計図をさらに練り上げて最適な作り方を発案。材質、形状、特性を考えながら製品を作りあげる提案型のメーカーだ。

 複雑なばねは金型から作るこだわりよう。精巧な金型の製造からフォーミングマシンでの製造に至る一連の工程では加工の角度や強さなどマシンの調整が必要になる。曲がり具合、弾力性。機械でまかないきれない微妙な調整は扱う人間の感覚に頼るしかない。その生産技術は熟練したばね一筋の従業員たちが支えている。宮川卓也社長(56)は「機械を使いこなすには長い時間がかかる。毎年新卒を採用し、金属加工のプロを育てることが大切」と人材育成の重要性を強調する。  


マシンで次々と作り出される精密ばね。機械を扱うには老練な技術による微調整が必要だ(東近江市・宮川バネ工業)
 最近はばねの製造にとどまらず、穴釣り用の釣りざおなどの販売にも取り組む。滋賀県や龍谷大との産学公連携で平行維持能力を訓練する装置も開発中で、そのプロジェクトは滋賀銀行の新ビジネス支援事業「しがぎん野の花賞」にも選ばれ、製品化に向けて順調に研究が進んでいる。

 「海外への生産移転などで日本のばねメーカーは激減しているが、ばねは日本の誇る重要な部品。われわれが進化させながら維持しないと日本の工業の未来はない」と語る宮川社長。ばねメーカーの誇りを大切にしながら常に新たな挑戦を続ける企業の姿勢。それは自社の技術に対する絶対の自信の裏返しともいえる。

[京都新聞 2007年5月20日掲載]

 脈々とものづくりの技が受け継がれている京都と滋賀には、こだわりの技術を磨き上げ、業績を伸ばしている企業が数多くある。大手企業の製品を影で支える京滋の中小企業の独自技術に光をあて、ものづくりの原点を探る。  毎月第3日曜日に掲載します。

≪メモ≫宮川バネ工業
1953年に宮川バネ工業として大阪で創業。58年に法人化し、84年に本社を滋賀に移転。資本金4000万円。社員35人。2006年度の売上高約8億円。薄板ばね、コイルばね、スイッチ部品、プレス部品などの製造を手がける。

さまざまな形状のばねやプレス部品。複雑な形も自在に作り出す技術が際立つ

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