The Kyoto Shimbun

独自開発にこだわり

クロイ電機京都市下京区

 縦約5センチ、横約10センチのプラスチック板に円形のスイッチが17個も並ぶ。室内にあるすべての照明機器の明るさを制御する調光器。最新の製品には、食事やテレビ鑑賞など生活場面ごとの照明パターンを記憶する機能も搭載している。

 機能が多様になると、回路基板や配線、コイルなど内部の構造が複雑化する。本社工場(京都市下京区)では、女性従業員が回路部品を一つずつ手にとり、状態や向きを確認しながら手際よくはんだ付けする。大型実装装置では処理できない細かな工程は、熟練の技が支える。

 回路基板上の半導体やコイルなどの素子は照明の使用状況によって温度が100度を超えることもある。このため「室内で使う照明機器は安全が第一。防火対策のためにも品質にはとくに気をつかう」と黒井剛社長は強調する。

 種類が豊富な照明機器は多品種少量生産が特徴で、住宅用だけで生産品目は1000種類を超える。照明機器の部材はガラスや木材、プラスチックなど多岐にわたる。主に丹波工場(京都府京丹波町)でそれぞれの成形加工などを行う。照明機器に関する幅広い製造技術を保有する。

 そのうえ、中核部品である調光器も自社生産にこだわるのは、照明機器それぞれの特性に合わせた構造設計が不可欠なためという。調光器は構造設計が品質を左右することから、正社員300人のうち70人を開発部隊にあてている。  


照明機器を制御する調光器向けの電子回路基板づくりは、手作業に頼る工程も多い(京都市下京区・クロイ電機本社工場)
 開発担当者は複雑な立体構造の中で、配線を極力少なく、熱が逃げやすく工夫する。開発部の佐久間徹副部長は「調光器開発にとって放熱設計が永遠の課題」と明かす。

 照明機器製品の9割以上を松下電工に納入。松下グループとの関係は、戦後間もない会社設立当初に手がけたトランジスタラジオの量産から本格化する。1960年代に竹などを使った和風の照明機器が大ヒットし、照明機器メーカーとしての地位を確立した。和風照明機器は現在も国内シェア3割を握る。「ナショナルブランドを支えてきた自負が社員の中に今も連綿とある」(黒井社長)。

 照明機器の用途は近年、誘導灯や防犯灯、広告看板などに広がってきた。発光ダイオード(LED)を使った製品展開も本格化しつつある。デザインの好みも移り変わりが激しく、最近は埋め込み型のダウンライトが主流になった。社内一貫生産によるスピードと独自の開発力で、刻々と変化する市場ニーズに対応する。

[京都新聞 2007年6月17日掲載]

 脈々とものづくりの技が受け継がれている京都と滋賀には、こだわりの技術を磨き上げ、業績を伸ばしている企業が数多くある。大手企業の製品を影で支える京滋の中小企業の独自技術に光をあて、ものづくりの原点を探る。  毎月第3日曜日に掲載します。

≪メモ≫クロイ電機
1952年設立。船舶用蛍光灯器具生産からスタートし、1960年代から松下電工向けに照明機器の製造を本格化した。73年丹波工場建設。90年に黒井電機からクロイ電機に社名変更。資本金9850万円。従業員は約480人。2007年3月期の売上高は108億円。

自社開発の調光器。照明機能の向上で、内部構造は複雑化している

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