The Kyoto Shimbun

釉薬無鉛化で安全に

陶☆(とうあん)(京都市東山区)

☆は、草かんむりに「合」その下に、にじゅうあし「廾」。


 絶妙な色の濃淡が、紅葉やボタンの花びらの絵柄に、奥深さを加える。陶☆(とうあん)の本店ギャラリーには、生産した陶磁器が並んでいる。言い表すことが難しい微妙な色合いやグラデーションが施された絵付けは、隣接する工房で、約20人の職人の巧みな筆さばきで描かれている。

 陶磁器を少量多品種生産する陶☆では、1つの製品の下絵付けと上絵付けを原則分業とせず、1人の職人が一貫して手掛ける。「絵付けには繊細な作業が求められる」と土渕善英社長(58)。焼き上がりも考えて微妙な濃淡をつける技術などは、経験でしか身につかないという。

 陶☆は、瓦職人だった土渕社長の祖父が創業、昭和40年代後半から陶磁器の生産を本格化させた。製品は日常的に使う食器が中心で、草木をモチーフにした絵柄を多く手掛ける。

 製品を特徴付けるグラデーションなどは、独自に開発してきた100種類以上の絵の具が生み出す。透明感を出したり、ソフトな印象の絵柄に仕上げたりと、さまざまな表現を豊富な彩色が可能にしている。

 工芸品の伝統を重んじながらも、他社とは一線を画す製品を目指し、技術革新に力を注ぐ。その1つが、焼き上げの際に比較的低い温度で溶ける低火度釉(ゆう)の無鉛化だ。  


丁寧な筆さばきで器に色を重ねる職人たち(京都市東山区・陶☆)
 鉛を含む釉薬は筆によくなじみ、発色も良くなるが、食品衛生法で飲食器からの溶出基準が定められている。「欧米を中心に国際基準はさらに厳しくなる傾向にある」と土渕社長。土産として製品の食器が海外に渡ることもある。「いっそ使わない方が分かりやすい」と12年前、工房で使用する釉薬の無鉛化に乗り出した。

 低火度の釉薬のうち、茶黄色の絵の具などを順次無鉛化し、最後に残った赤も今年1月に実現した。発色なども鉛入りと比べて見劣りせず、食の安全性に関心の高い層のニーズに対応できるほか、職人の健康や工房周辺の環境維持にも貢献できるという。

 無鉛化の取り組みは、京都市中小企業支援センター(下京区)が支援企業を募集、審査するVC(企業価値創出)プランオーディションでも認められ、オスカー認定を受けた。土渕社長は、今年3月の認定式で「本来、大学などが研究すべき課題を解決した」と高く評価してくれた審査員の一言が、「認定を得たこと以上にうれしかった」とほほ笑む。

 「自分たちの作る陶磁器は、工芸品ではあるが、美術品ではない」と土渕社長は強調する。独りよがりにならず、顧客が喜ぶ製品をいかに作り上げるか。「技術力が許すかぎり、どのような注文にも応じたい」という言葉に、ものづくりに対するこだわりが表れている。

[京都新聞 2007年7月15日掲載]

 脈々とものづくりの技が受け継がれている京都と滋賀には、こだわりの技術を磨き上げ、業績を伸ばしている企業が数多くある。大手企業の製品を影で支える京滋の中小企業の独自技術に光をあて、ものづくりの原点を探る。  毎月第3日曜日に掲載します。

≪メモ≫陶☆
1922年創業、1950年に株式会社にした。資本金1000万円。社員約50人。2006年8月期の売上高約3億円。卸売りのほか、本店を含む4店舗で直販も行っている。光が透ける磁器の特徴を生かしたランプや磁器の印鑑も製造している。

多彩な色合いや繊細なグラデーションで絵付けされた陶☆の陶器

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