The Kyoto Shimbun

精巧模型で時代再現

さんけい(京都市右京区)

 眼下に広がる平安時代の街並み。手のひらサイズの障子まで動かせる民家。赤ん坊をおんぶしたり、魚を載せたかごを担いだりと一体ごとにしぐさや表情も違う3センチに満たない人形。博物館や資料館の精巧な模型を眺めていると、自分がその町に暮らしていたら、と思わず引き込まれてしまう。さんけいは、そんな精巧模型を作り続けている。

 創業以来40年以上、商品は博物館などを中心に納めてきた。展示されれば細部まで見られることは少ないが、模型に学術的な価値も求められるため、実物の設計図や文献から研究者が復元した図面などに基づき正確な寸法や組み方に仕上げる必要がある。1辺1ミリの四角い穴でも、直径1ミリの丸い穴でも見た目は大差ないが「そこは妥協できない」と松並竜也取締役モデルアート・チーフプロデューサー(43)。そのために0・5ミリ幅ののみや親指サイズのかんななど、工具も自作し、仕事をこなす。

 それでも、溝を彫った木材を組み合わせて作る障子や格子戸など0・1ミリ単位の正確さが要求される仕事では、のみなどでは限界がある。その作業を可能にしたのが、約20年前に自社開発し、今も現役で活躍している超小型昇降盤だ。金属加工用の小型丸ノコを木材加工に転用した機械工具で、最小幅0・4ミリの加工を正確に行えるようになり「飛躍的に精巧な模型を作れるようになった」という。

 これらの自作工具による精巧模型作りを支えているのは、中学生の時から模型店のディスプレー用プラモデルを作っていたという松並取締役ら「ものづくり好き」社員8人。全員が図面作りや工具の扱いなど木工技術を身につけているのが強みだ。図面のないものは、担当社員自ら現物を測量し、図面作りから制作に取りかかる。


建築模型用の木材を加工する社員(京都市右京区・さんけい)
 また最近は建物模型だけでなく、展示にリアリティーを出すため人形の注文が増加しているという。こちらは建物とは異なり正確な設計図はない。代わりに人物の年齢、職業、性別を細かく設定。参考資料として保存している各時代の絵に描かれた人物図に基づき、軸となる針金に付けた樹脂粘土を、指先とピンセットでこねたり切り込みを入れて造形する。蓄積した時代考証データと作者の想像力が組み合わさり、腰の曲がった老人や着物のすそを翻して歩く女性など、設定時代に即した市井の人々が生み出されていく。「納期に追われ要望通りの作品に仕上げるのは、しんどい仕事」と松並取締役はこぼすが、「だからこそ、どの商品にも思い入れがある」。

 同社は現在、企業向けの創業社屋復元模型や個人向け町家キット制作、企業ミュージアムのディスプレー事業などに仕事の幅を広げている。博物館用模型で培った技術とものづくりへの熱い思いをベースに、新たな市場開拓にも余念がない。

[京都新聞 2007年9月16日掲載]

 脈々とものづくりの技が受け継がれている京都と滋賀には、こだわりの技術を磨き上げ、業績を伸ばしている企業が数多くある。大手企業の製品を影で支える京滋の中小企業の独自技術に光をあて、ものづくりの原点を探る。  毎月第3日曜日に掲載します。

≪メモ≫さんけい
1963年創業。資本金1000万円。社員18人。2007年5月期の売上高は1億2000万円。屋内だけでなく、屋外展示用模型や個人向け商品も扱う。毎月第3土曜には、かやぶき民家や町家の模型などが並ぶ本社内モデルアートミュージアムを一般公開している。

3センチに満たないサイズの人形に色を塗る社員

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