Kyoto Shimbun 1997.11.25 気になるリポート

「年の離れた
  夫婦がウケる」ワケ

 「私たち、アツアツに見えるかな」。 1組の男女が仲むつまじく会話する。20歳代の女性と、どう見てもその父親にしか見えないおじさん。情景は進み、視聴者はようやく2人が夫婦ということに気づく。「年齢の離れた夫婦」という設定のテレビコマーシャルが最近、増えている。しかも視聴者に受けがいい、という。果たして、それは現代人の新しい結婚観を反映しているのだろうか。

(社会部 脇坂純一)


現代人の願望反映
 このCMを流しているのは、コンビニエンスストアのローソン社(本社・東京都港区)だ。夫役は50歳のミュージシャン細野晴臣さん、その妻は28歳の人気歌手森高千里さん。年齢差は22ある。結婚して、まだ一年ちょっとの仲良しカップルだ。

 音楽史を教える私立大教授の夫はある日、自宅に教え子の女子学生を招く。2人は、彼女たちに結婚前の関係をたずねられる。若い妻は「先生と、その元教え子」とはにかみ、女の子たちは「エーッ」と大騒ぎになる。

 電通など大手広告代理店によると、およそ9社が現在、コマーシャルに「年齢の離れた夫婦」という設定を使っている。いずれも、ここ1、2年で放映され出したものばかり、という。ほぼ共通しているのは、結婚したてのカップルで、チャーミングで少し積極的な若妻と、戸惑いながらもそんな妻を愛しいと思うマイペースの中年の夫、という組み合わせだ。

◇  ◆  ◇  ◆  ◇

 こうした新しい型の夫婦像を世間はどう受けとめているか。

収入多い中年あこがれ

 女性のキャラクターと同じ世代になる京都市伏見区の大学生木村志保さん(19)は「うんと年上だと、どこまでもやさしくしてくれそう」とあこがれる。西京区のOL長谷川朋美さん(24)も「それなりの収入があって、精神的にも落ち着いている。一緒に暮らすには理想的かも知れない」。

やっぱり若い女性好き

 中年の男性諸氏は、「そりゃあ、歳とってるより若い方がいいに決まってる」「単純で扱いやすい」と本音を話してくれた。でも、みんな「妻には内緒だけどね」と口をそろえた。

 こうした夫婦像は、男女や世代の別なく、茶の間の支持を集めている。テレビCMのストーリーや舞台裏などを特集する雑誌「CM・now」を発行する玄光社(東京都千代田区)の編集部によると、中年女性の読者からも「ほのぼのしていて好感が持てる」という便りが届くそうだ。同誌は「年末恒例の読者の人気投票でも、今年はかなり上位にくい込みそう」と予想している。

◇結婚観の自由化も

 結婚の仲介や相談などに応じるオーエムエムジー社(東京都港区)の今年の調査がある。「結婚相手の何を最も重視するか」という問いに対して、男女とも1位は「人柄」だったが、2位は女性が「収入」、男性が「容姿」だった。

 現代家族の動向を研究している立命館大産業社会学部の飯田哲也教授は「2位に出てきているのが本音だろう」と見る。「個人差はあるが、中年男性はいつの時代も若い女性が好き。最近、若い女性のわがままの度合いが強くなっただけ」と考えるのだ。

 「注目すべきこと」として、飯田教授は結婚に対する社会的規制が緩んだことを指摘する。社会的規制とは、親族など本人周辺の意見を指す。「さまざまなタイプの結婚を世間が容認するようになり、夫婦のイメージが自由になってきた」というのだ。

◇ でも親子と見分けがつかないのは困る

 コマーシャルに登場する夫婦は、現代人の願望をうまく先取りしている、ともいえる。CMを作ったローソン社広報部も「年齢の離れた結婚は、以前なら世間から白い目で見られたが、もうそんな時代ではない」と言い切る。

 なら、次はおしゃれな中年女性とかっこいい青年の夫婦も流行するかも知れない。街を行く歳違いのカップルすべてが、見ただけで親子か夫婦か簡単に決められなくなるのは困るけど。



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