Kyoto Shimbun 1998.4.13 気になるリポート

「赤ちゃんが笑わない」ワケ

 赤ちゃんにめっぽう弱い。あのキャッ、キャッと喜ぶ笑顔が大好きだ。電車やバスの中で母親に連れられた赤ちゃんを見ると、つい「いないいないばー」とやってしまう。ところが最近、笑わない赤ちゃんが増えている。どことなく表情も硬い。いったい、「天使のほほ笑み」に何が起きているんだ。
(社会部 国分浩幸)





 抱いてくれなきゃイヤ

    

 「他人だけでなく、母親に対しても笑わない子が増えているんですよ」。京都市中京区の託児所「こどものくにTONTON」の保母さん(27)は最近の傾向をこう話す。別の保母さん(30)も「母親が迎えに来ても、無表情のままの赤ちゃんがいる。エッ、って驚くことが多くなった」と感じている。

 実は、こうした乳幼児の存在は、医師の間では数年前から話題になっているのだという。山口県吉敷郡小郡町の小児科医・柳沢慧医師は、「笑わない、泣かない、目を合わさない、赤ちゃんらしさがない」一歳前後の乳児を「サイレントベビー」と名付け、注意を促している。

 サイレントベビーのはっきりした数や実態は分からないが、育児経験の浅い母親が「おとなしい良い子」と勘違いしているケースもあり、潜在的な数は相当多いとみられている。

1日1回ギュッと
    母親との触れ合い不足


 「育児環境の変化で、母親が赤ちゃんを抱かなくなったのが大きい」と柳沢さんは推測する。乳児は泣き笑いで気持ちを表現するが、親が気づかなかったり、反応しなかったりするとだんだん表情をなくしてしまうらしい。

 とはいっても、あまり深刻にならないで。幸いサイレントベビーは病気とはいえず、母親がよく抱くだけで軽症なら一〜二週間、大部分は一〜二カ月で治るという。柳沢医師は「一日一回ぎゅっと抱こう」とすすめる。赤ちゃんを安心させてあげることが、笑顔を取り戻す近道のようだ。

 母乳育児の再評価も明るい兆しだ。厚生省の一九九五年の調査では、人工栄養の育児が減る一方で、母乳と粉ミルクを併用する親が四五・九%と十年前に比べ四・五ポイント増えている。

 初めての子どもを母乳で育てている中京区のお母さん(26)は「肌と肌が触れるし、お乳をあげている間ずっと話しかけているのがいいみたい」と表情も柔らかい。

 「赤ちゃんは抱かれるために生まれてくる」(石田医長)。生後六カ月間に抱き過ぎるほど抱けば、サイレントベビーの心配はないそうだ。

 赤ちゃんが笑えば、周囲がぱっと明るくなり、幸福な気分が広がる。どうか、街中に天使のほほ笑みを。


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