Kyoto Shimbun 1998.9.8 気になるリポート

情報誌で「出会い」を求めるワケ

 「出会い」を求め、個人情報誌に若者たちが群がっている。「彼女募集してます」「いろんな友達がほしい」「ベル友になって」…。キャッチコピーに、プリクラや写真、数行のメッセージを添えて、誘いをかける。誌面にびっしり並ぶ顔写真をながめるだけで、頭がクラクラしてきそうだ。こんな「出会い」に、若者はどんな思いを寄せているのだろうか。

(社会部 平井利彦)



 ”生身の人づきあい”苦手 

 「毎日退屈なので、一緒に遊んでくれる優しい男の人探しています」。この夏、伏見区のアルバイト齋藤綾さん(24)は、こんなメッセージを写真と一緒に個人情報誌に載せた。初めての体験だった。

個人情報誌編集部から手紙が転送されてきた。返事は神戸、姫路、奈良からも来た。ふだんの生活では知り合えない人ばかり。彼女は「友達の輪も広がる予感がある」とほほえんだ

 返事は手紙やインターネットで七十七通もきた。二十代後半からが多かったが、中には五十代の男性も。「サークル活動しませんか」はいいとして、「結婚を前提におつきあいしたい」と便せん四枚に綴られては、困惑してしまう。「会ってもいないのによくそこまで書けるな。この真剣さは何」。

 「生活に変化がほしかった。何通返事がくるかなと軽いノリで」というのが動機。「返事の数は自信につながる。私もすてたもんじゃない」と感じた。

 京都市右京区の専門学校生(23)は「子どもや自然が好きな人返事下さい」と出した。彼女と別れた直後。精神的に落込んでいた。「共通の考えを持った人と出会えたら」。

 六通の手紙が来て、一人の女性と大阪の水族館で一度デートもした。だが、それ以来会っていない。「考え方や性格が合わなかった」。後悔はしていない。「手紙のやりとりを通じて、自分を見つめ直すことができたから」。彼女と別れた心の隙間を埋めるためだったと、あとで気づいた。

 自分の存在アピール心の隙間埋めて…

 関西での個人情報誌は二誌。一昨年秋に「わぁでぃ」(エイ・エム・ジー)、続いて昨年一月に「じゃマール」関西版(リクルートフロムエー)が創刊された。「売る・買う・出会う」の情報が、どちらも原則無料で掲載される。

 二十万部発行の「わぁでぃ」は二千二百件の情報を掲載する。「出会い」が六割を占め、掲載希望は毎月三千件にもなる。一方、毎月八千件の情報が掲載される「じゃマール」関西版の掲載希望は毎月一万三千件、「出会い」は約三割だ。毎月二回、十七万部の発行と好調だ。

 「出会い」を求める若者を、「じゃマール」関西版の戸高清美副編集長は、こう分析する。「自分に優しく、自分を傷つけたくないから」。面と向って「つきあって」と言って断られるショックを、避けたいのだという。

 若者のコミュニケーション手段であるポケベルや携帯電話は、かかってこないとより寂しさや孤独を感じさせてしまう。個人情報誌に手っとり早く掲載することで、「『いるんだ』と、注目してほしいのではないか」(戸高副編集長)。

◆  ◆  ◆

 個人情報誌に登場した女性を取材した「ペーパーアイドル」(ザ・マサダ)が先月、出版された。多くの男性からラブコールを受けて、舞い上がる女性を、ノンフィクション作家の野浪まことさんが命名し、自著のタイトルにした。

 「人の本質を見て、好きと言っているわけではない。薄っぺらな口説き文句と思い込みだけの世界。一瞬のアイドルだな」

イタ電などリスクも

 野浪さんの分析はこうだ。「日常生活で人と向き合って関係を作っていくのが苦手。ちょっと努力すれば出会いの相手は身近にいるのに、その努力を避けてしまう。プリクラを集めて友達の数を競っているが、浅いつきあいに終わってしまう。個人情報誌には、不特定多数に求めれば、一人ぐらいはいい人が、と幻想を抱いているのでは」

 住所や携帯電話番号など、個人情報を公開するリスクもある。いたずら電話に悩まされたり、家まで押しかけられた、といった話も聞いた。常に自分を冷静に見つめる目を持たないと、情報誌でせっかく得た「出会い」も、薄っぺらな幻に終わってしまうかもしれない。



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